患者が変わるための「患者会」

【武中】がん闘病中に山口さんが今、理事長を務めている(ささえあい医療人権センター)COMLを知り、スタッフとして働くことになった。

【山口】COMLがいいなと思ったのは、特定の疾患を対象にした患者会ではなく、患者支援団体であること。患者が変わらなければならないというのは感じていたんです。

【武中】変わらなくてはいけないとは?

【山口】例えば、みんなで大部屋で賑やかに話をしているのに、回診ですって言われるとみんな布団に入って寝るんです。元気なのに(笑い)。私は聞きたいことがたくさんあるので、ドクターに質問しますよね。それを見た他の患者が、あんなこと聞いていいの?と言うんです。

みんなそれぞれ聞きたいことあるんです。それを聞こうともしないで、私に聞いてきたりする。それは違うんじゃないかって思っていました。

【武中】COMLの主たる活動は、電話相談。山口さんの著書『賢い患者』には、仕事復帰、介護、差額ベッド代など様々な内容の相談の内容が書かれています。そうした知見を元に「医者にかかる10箇条」を作成されている。中でも、目を惹いたのは〈医療にも不確実なことや限界がある〉という記述でした。

【図表1】医者にかかる10箇条
出所=『カニジル 21杯目

【山口】自分が患者だったとき、絶対に治してもらえるとは思っていませんでした。抗がん剤を受けた後、どれぐらい効果があるんですかって聞いたんです。そうしたら「せいぜい良くて10パーセントかな」と言われたんです。そのとき頭に浮かんだのは、テレビの視聴率でした。

20パーセントの視聴率って高いとされる。でも80パーセントの人は見ていない。あれだけ苦しい治療を受けても10パーセントしか効果がないのか、限界があるなと思いました。

【武中】(腕組みしながら)すごい効く新薬が出ましたと聞くと、不治の病が根治できる夢の薬と思われることも多い。しかし、実際には効果が20パーセント上乗せされた程度、ということはよくあります。

患者さんとの会話のキャッチボールが重要

【山口】医療分野では、医療者と患者が持っている情報の質が全く違います。いわゆる情報の“非対称”です。そのため、同じ日本語でコミュニケーションしているのにイメージの隔たりがある。COMLではある病院で医師1年目の初期研修医向けに「医療面接セミナー」を行なっています。そこでは医療者側と患者側の視点の違いが明確になります。

【武中】医師が、本物ではない模擬患者さん、シミュレーテド・ペイシェントを“診察”するものですね。

認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子さん
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子さん

【山口】研修医は模擬患者に必死で説明するんです。中には理路整然と説明する研修医もいます。すると同じ研修医たちは、「説明が見事だった」と称賛します。一方、模擬患者側は「私の言い分を聴いてもらえなかった」「理解しているかどうかお構いなしに説明が一方的に進んだ」というフィードバック(感想)でした。

【武中】(深くうなずいて)まだ患者さんにベクトルが向いていないんです。手術するときの合併症の説明をしなければならないとします。出血、感染症、再手術の可能性がそれぞれ何パーセントあります、というようなことをバーッと言う。あー全部言った、良かったと満足する。