アートに力を入れている病院は印象に残る

【山口】ある大学病院に行ったときに、事務の方が忖度したのか、〈この人、COMLの探検隊です〉というメモが受付で見えたことがあったんです。医師たちは、なんのためにやるんだって激怒されていた(笑い)。

【武中】クレームやモニター結果から新しい発見があるかもしれないのに……。私も病院長やっているので、医療現場ではそうしたことが起こりがちだというのは理解しています。逆に病院探検隊でいい印象があるのはどんな病院ですか?

鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 21杯目』
鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 21杯目』

【山口】このとりだい病院もそうなんですが、アートに力を入れている病院は印象に残りますね。先ほど、病院を見学させていただきましたが、「アート回廊」として素晴らしい写真や絵画などが展示されてありました。手術室の壁画も素晴らしい。

【武中】病院を受診する、手術を受ける患者さんはどうしても緊張されています。それを少しでも緩和できればいいなと考えています。病院探検隊と趣旨は似ているのですが、私が病院長になってから、サポーター制度に力を入れています。モニター部門とボランティア部門など4つの部門からなります。

モニター部門は、例えば、とりだい病院の受診アプリ「とりりんりん」を使ってもらい、使い勝手がどうなのか、改良点があるのかなどの意見を出してもらいます。ボランティア部門は病院の中に入って、いろんな活動やお手伝いをしていただく。

【山口】それは素晴らしいです。COMLとして病院探検隊をやっていますが、本当は地元の人々に見てもらってフィードバックしてもらうのが理想だと思っています。

看護師や医者も患者の「一言」で傷つく

【武中】ただ山陰の人は優しいので、気を遣ってあまり言っていただけないかもしれない(苦笑)。

山口育子『賢い患者』(岩波新書)
自らの患者体験を土台に、患者の医療の向き合い方を探求。患者と医療者ともに同じ目標に向かって歩むという視点に立ち、両者による“協働”の実現化のため、幅広く取り組んできたCOMLの活動を紹介する。

【山口】ぜひ、言ってほしい。ただ、一つ気をつけなければならないのは、言い方。我々も、病院探検隊で問題があったとしても否定的な結論だけ伝えることはしない。それだと受けとめてもらえないんです。なぜ、そう感じたかの理由やどうあってほしいかの提案・提言を伝えるようにしています。

【武中】先ほどの、とりだい病院の病院探検隊のリポートにはこうも書いてあります。〈受付職員が保険証の番号を確認しようとしたのは、できるだけ保険で診療できるようにしようという配慮からだと思う〉。確かにこうした思いやりがあれば受け入れやすい。

【山口】かつて私が入院していたときの話になるんですが、長く病院にいると医療者とも仲良くなるんです。そこで気づいたのは、当たり前のことなんですけれど、看護師さんやお医者さんも患者の一言で傷ついたり、悩んだりしていること。

そこに患者側は気がついていない。患者側は、医師は違う世界の人みたいに思っているところもある。お互い、人間対人間という原点に立たないと医療は良くならない。

【武中】山口さんの言葉が我々に突き刺さるのは、医療の知識もあって、現場もご存じであるから。これからも、とりだい病院を厳しく、そしてあたたかく見守ってください。

山口育子(やまぐち・いくこ)
認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML理事長
1965年大阪生まれ。1990年卵巣がんを発症。1991年COLMの創始者である辻本好子と出会い、COMLの活動趣旨に共感して1992年よりスタッフとなり、相談、編集、渉外などに携わる。2002年より専務理事兼事務局長を経て、2011年8月理事長に就任。数多くの厚生労働省審議会・検討会の委員、広島大学歯学部客員教授も務める。全国各地の講演会に赴き、医療リテラシーの普及に尽力し続けている。
武中 篤 (たけなか・あつし)
鳥取大学医学部附属病院長
1961年兵庫県出身。山口大学医学部卒業。神戸大学院研究科(外科系、泌尿器科学専攻)修了。医学博士。神戸大学医学部附属病院、川崎医科大学医学部、米国コーネル大学医学部客員教授などを経て、2010年に鳥取大学医学部腎泌尿器科学分野教授。2017年副病院長。低侵襲外科センター長、新規医療研究推進センター長、広報・企画戦略センター長、がんセンター長などを歴任し、2023年から病院長に就任。とりだい病院が住民や職員にとって積極的に誰かに自慢したくなる病院「Our hospital~私たちの病院」の実現に向けて取り組んでいる。
(写真=七咲友梨 構成=カニジル編集部)
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