従来の常識を変える「ロボット支援手術」との出会い

2010年8月、とりだい病院はロボット支援手術を導入、2011年2月に『低侵襲外科センター』を設立、複数の外科でのロボット支援手術を進めていた。

「第一印象はかなり大変そう、というものでした。まだ慣れていなかったこともあるでしょう、当時の(胸部外科診療科群)教授だった中村廣繁先生が苦労して手術をされていた。本当に普及するのかとも思いました」

中村は日本呼吸器外科学会のロボット支援部会の部会長でもあった。

「廣繁先生たちが症例を積み重ねて2018年に保険適用となると、そこから他の病院が一気に始めることになったんです」

田中の所属していた神戸大学病院の呼吸器外科でもロボット支援手術を始めた。

「ロボットは4本の手。我々は2本の手でやってきた。手でやっていたことに囚われていて、最初は使いこなすことができなかった」

ただ、ロボットは細かい作業が得意。手と違い“関節”を自由に動かすことができる。配置する位置などのセッティングを含め、ロボットの力を引き出すための時間がかかったんですと田中は言う。ロボット手術による技術の均一化という恩恵を受ける患者の数は増えるだろう。ただ、同時に田中は課題にも気がついた。

肺切除の手術数で国内トップレベルの実績に

「どこの病院もまずはロボット手術は若手が経験を積むような比較的、平易な手術から始めます。そうなると若手は自分で手術をすることができない上、ロボット手術のお手伝いをするだけ。ロボット手術を行う医師は、体力的、精神的にしんどくても新しいことをやっているという充実感があります。でも手伝いをしている医師にはそれがない」

そこで田中はチームを作り、若手医師たちに意見を求め、なるべく均等に経験を積ませるようにした。

医療関係者のカンファレンス
写真=iStock.com/kazuma seki
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「穴を空ける位置、ロボットをどこに置くか、頭側か背中側か。そうしたことをみんなでディスカッションしました。神戸大学(呼吸器外科)は鳥取大学よりもずいぶん遅れてロボット手術をスタートしたんですが、症例がどんどん増えていき、2022年には肺切除の手術数で国内トップレベルの実績を挙げたんです」

そして2024年、田中は住み慣れた神戸を出て、新たな階段を上ることにした。鳥取大学医学部呼吸器・乳腺内分泌外科学分野(胸部外科診療科群)の教授選に応募し、採用されたのだ。

「鳥取大学は我々の学会でも有名な施設なので高いハードルでした。やるからには覚悟を決めました」