どこの問屋も相手にしてくれない…

しかしいくら画期的な商品とはいえ、普及への道は容易くない。

無名の悲しさか、できあがった「オニツカタイガー」をどこの問屋も相手にしてくれませんでした。

そこで、私は頂上作戦と称して、神戸高校の松本幸雄監督に紹介状を書いてもらって、近県の強豪チームの監督やコーチを訪問してPRしました。松本さんの紹介ということもあり、監督やコーチは使ってみて良さがわかると、地元の有力運動具店を紹介してくださいました。

そうやって頂上から下りていって口コミで愛好者の裾野を広げていき、5、6年で最終的には50%のシェアを獲得するまでになったのです。中小企業は大手と同じ土俵では太刀打ちできません。徹底した差別化作戦。これこそが中小企業が生き残っていく方法だと思います。

Onitsukaタイガー
写真=iStock.com/ilbusca
※写真はイメージです

箱根駅伝の躍進を呼んだ伝統の「錐モミ商法」

今年の正月に行われた箱根駅伝は、青山学院大学3連覇の話題で持ち切りだったが、一つ注目したいのはアシックスの躍進である。5年前の2021年大会でナイキの着用率は実に95.7%(210人中201人)にまで達し、アシックスは0人という結果だった。

しかし翌年の大会で、アシックスはシェア率を11.4%まで急回復させると、着実に着用者数を増やし続け、2025年大会ではついにナイキの23.3%を逆転。トップのアディダスに次ぐ25.7%にまで引き上げた。

その大躍進の陰にあったのが、「Cプロジェクト」というチームの存在だった。これは「速く走ること」を徹底的に追求するために、各部署の精鋭を集めた社長直轄組織として2019年に生まれたもの。鬼塚喜八郎氏の言葉「まず頂上から攻めよ」にある、「CHOJO(頂上)」のCの頭文字を冠した名称であるという。

一点集中の「錐モミ商法」。頂上から攻めていく「頂上作戦」。これぞ小が大に勝つ経営の極意と呼べるだろう。そしてその鬼塚氏の創業者魂は、昭和から平成、令和へと時代が移り変わったいまも脈々とアシックスに受け継がれていたのである。

さて、あなたのビジネスはどうだろうか。あなたの組織はどうだろうか。

【関連記事】
松下幸之助「血の出るような努力をせよ、そして社員に見せよ」…新年に読みたい"地獄を見た"リーダーの言葉
トヨタでもサントリーでもない…ハーバード大学経営大学院が教材にする従業員850人の日本の同族経営企業
だから日本人の「百貨店離れ」が進んでいる…三越伊勢丹HD元社長がルイ・ヴィトンを絶対に入れなかった理由
「出光は社員を1人もクビにしない」経営難でも1000人以上を雇い続けた出光佐三の不動の"経営哲学"
「日本の新幹線」を売らずに済んでよかった…「走るほど大赤字」インドネシア新幹線を勝ち取った習近平の大誤算