ところで、現在の日本は約1兆3000億ドル(約100兆円)の外貨準備を持っている。GDPの200%、すなわち1000兆円近い莫大な財政赤字を抱えているにもかかわらず、なぜわが国が100兆円もの外貨を所有しているかと言えば……勘のいい人はおわかりだと思うが、円高を是正するための為替介入の円売りドル買いで得た外貨だ。
円高を是正するために為替介入するということは、イコール円を売って外貨を買うことである。要するに、現在の日本が巨額の外貨準備を持っているのは、為替介入のために円で外貨(大半はドル)を買ったからなのだ。
では、外貨を買うための円はいったいどこから調達してきたのだろうか。為替介入をすると宣言するのは簡単だが、1兆円分のドルを買おうと思えば、当然1兆円分の円が必要だ。ところが日本は財政赤字の国なのだからそんなお金はどこにもない。つまるところ、国債を発行して借金をする以外に、ドルを買うための円を用意する方法はないのである。
このように、為替介入のために発行する短期国債のことを「為券(ためけん)」と呼ぶ。為券と書くとややこしいので一般にはFBと表記することが多いが、ともあれ短期国債を発行して円を調達し、その円で外貨を買うのが為替介入のやり方なのである。
さて、埋蔵金とは、先ほど述べた通り、外為特会のバランスシートで言えば純資産に当たる部分であった。この純資産がどのように形成されるかといえば、バランスシート上の「資産」である外貨の金利と、「負債」である短期国債の金利の差から生まれてくる。要するに「差益」だ。
かつて外貨の金利は、日本の短期国債の金利に比べると非常に高い水準にあった。日本の短期国債が0.何%というほとんどゼロに近い水準にあるとき、たとえばドルの短期債は5%程度の利回りを出していた。つまり、ほぼタダ同然で手に入れた円で1兆ドルを手に入れ、それを5%で運用すれば、それだけで年に50億ドル程度の利益を得ることができたのである。そしてこの「差益」こそ、埋蔵金の正体なのである。政府はこの差益を払い出して国家予算に充当したと主張しているわけだ。