最高益更新、構造改革の真っただ中、イノベーションの途上……。それぞれの局面で求められているのはどのようなリーダーなのか。
新興のオンラインゲーム陣営が台頭するなか、業界老舗のスクウェア・エニックスはいま劣勢にある。2012年度連結決算では最終赤字に転落。03年にエニックスとスクウェアが合併して以来最大の赤字額だった。和田洋一社長が退任し、後任を託された。公認会計士出身でCFOとして和田体制を支えてきたが、「従来のビジネスモデルでは通用しない」と危機感は強い。反転攻勢の機会を探り当て、復活となるか。
――局面は厳しい。
【松田】ビジネスモデルの変わり目にある。これまで家庭用ゲームの収益は価格×本数で決まっていた。開発と販売は切り分けられ、ゲーム開発者は作品づくりに集中すればよかった。当社の強みもそこにあった。
そもそもゲームビジネスは「コインをいかに投入してもらうか」から始まった。その後、家庭用機器が普及し、ゲームデザインと課金は切り分けられ、当社はそこで成長した。だが現在盛んなオンラインゲームでは、再度「いかに課金を得るか」がテーマとなり、開発と販売が不可分となった。そして遊べる場所もあらゆるデバイスへと広がった。まさにパラダイム・シフトだ。
昔はゲームの世代交代には3~5年ほどかかった。いまはリリースしたタイトルは日々更新されていき、3カ月程度で状況が一変する。こうしたスピードに対応するには、開発と販売の一体化が急務だ。
――これまでのキャリアは?
【松田】新卒で三井生命保険に入社し、営業職員の人事業務を担当した。その後、退職して公認会計士資格を取得し、複数の監査法人での勤務を経て、98年に旧スクウェアに入った。2000年に1度辞めたが、和田が社長になるときに誘われ01年に再入社した。当時は「ドットコムバブル」が騒がれ、いろいろと魅力的な企業もあった。だがシステムで儲ける世界より、コンテンツの世界で勝負したいと思い、誘いを受けた。
前者のコアは「標準化」だが、後者のコアは「個性」だ。ファッションブランドを育てることに似ている。特に重要な指標は「資産回転率」だ。開発者たちはものづくりに時間とカネをかけたい。だがそれは資産回転率の低下に繋がる。そこをいかにバランスさせるかがポイントだ。
実際、最終赤字の要因のひとつは、開発から発売までの遅れだ。そうしたタイムラグは、ユーザーとの接触頻度の減少を意味する。我々はもっとタイムリーにお客様の要望に応えていく体制を整える必要がある。1年単位などと悠長なことは言えない。緊急に改革をやらないといけない。