問題はさまざまな形でこじれていて、「ブラック企業」という言葉はそれを助長した部分がある。そろそろ「ブラック企業」という言葉をいったんお休みしてはどうだろうか。問題の解決には、あいまいなイメージではなく、個別の指標で論じていく必要がある。具体的には、労働時間、早期離職率、メンタルヘルス問題の発生率などだ。

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大卒3年目までの離職率は……

そんな私は「お前もブラック企業出身だろ」と言われることがよくある。それは私がリクルート(現在は持ち株会社制に移行)出身だからだ。私は97年に入社し、2005年まで在籍した。私が入社した頃のリクルートは、周りからはまったく尊敬されない企業だった。贈収賄事件を起こしたうえ、経営の多角化の失敗で1兆円もの借金があった。創業事業の情報誌はインターネットの普及で淘汰されるという見方もあった。札幌の親戚からは「最近、ジョアやミルミルは売れているのか?」とヤクルトと間違われる始末だ。

仕事は噂以上に忙しかった。入社直後にはさっそく「飛び込み営業」をさせられ、ホテルで合宿をしながら互いの長所短所を指摘しあうという研修もあった。徹底した実力主義で、競争を求められるため、毎日8時半に出勤し、終電を過ぎるまで、休みを問わず働いた。給料は良く、残業代を含めれば20代でも年収は1000万円近かった。上司は厳しかったが、実に丁寧に仕事を教えてくれた。離職率は高く、入社後3年間で4割はやめていたと思うが、多くは前向きな独立だった。

「リクルートごっこ」はベンチャーの甘え

リクルートはきつい労働環境の会社だったが、待遇はよかったし、次につながる経験をすることができた。自分自身を含めハードワークで体調を崩す人間もいたが、企業に潰されると思ったことはなかった。

OBには、「アレオレ詐欺(あれ、オレがやったんだぜと実績を誇張すること)」といって当時の実績を盛って話す人も多い。離職率の高さから、「人材“排出”企業」と揶揄する声も聞かれる。それでも私自身、リクルート出身であることで得したことのほうが多いと思う。