学生は当時も今も変わらず「大手志向」
ベンチャー企業のプロ・フィールド代表の車陸昭氏(95年、法政大学法学部法律学科卒)はスタートが4年(94年)の春で、当時としては遅い。「マスコミでは就職氷河期と騒がれていたが、不安や焦りはなかった。進む道が明確だった」と語る。10代の頃からいつかは起業したいと思い、営業の仕事を選んだ。貿易に関心が強く、海外展開をしている企業に絞った。
大学のOBやリクルーターに頼ることはしなかった。早いうちに中小企業を受けて、内定。心に余裕を持ち、大企業を受験した。本命の音響メーカーのケンウッドから内定を得た。
周囲の学生は大手志向が強かったと見る。「秋になり、内定がないと落ち込んでいた。初めに中小企業を受けることをしていれば、状況が変わったのではないか」。
2001年に会社を創業し、ここ5年は新卒採用を行う。学生の半数は就職に臨むにあたり、明確な考えを持ち合わせていないように見えるという。
「90年代の学生の意識とさほど変わらない。今も、大手志向が強い。本当にやりたいことがあるならば、中小やベンチャーのほうがチャンスはある。採用意欲が強いから、就職はできるはず」と雇用のミスマッチを指摘する。
97年には、金融危機が発生し、北海道拓殖銀行や、山一証券などが倒産し、不況は一段と深刻になる。多くの企業はこれまでの採用や雇用のあり方を大胆に見直す。「成果主義」の導入が進み、賃金が抑え込まれる。「早期退職優遇制度」の下、リストラは加速度を増す。大卒の新規採用は一層に絞り込まれ、厳選採用となる。正社員になれない20~30代があふれかえることになる。
(読売新聞/AFLO=写真)