「早稲田の政経」でも就活に苦戦
作家の江上剛氏(77年、早稲田大学政治経済学部政治学科卒)は、就職活動を報じる新聞記事の見出しに「大学は出たけれど…」と載っていたことを覚えているという。
「景気は悪く、大企業の求人は少ない。総合商社の中には、採用を見送った企業もある。早稲田の政経出身でも、苦戦した人がいた。同じゼミの学生は、三菱電機や三菱重工などに入ったものもいれば、地方公務員もいる」
当初、出版社を受験しようと思っていたが、求人が見つからない。ゼミの友人の勧めもあり、第一勧業銀行を受験したところ、内定。入行後は人事部にいた時期がある。出身大学はその後の昇格や配転など人事の扱いに関係があることを知ったという。
「東大OBは、他の大学卒業者よりは大きな仕事ができるチャンスが多いが、それを生かせないと、高い評価は受けない。早稲田や明治出身は荒っぽい仕事をする部署や支店に配属された傾向がある。そこで認められて、役員になったものもいる。“早稲田の政経”出身で、配属や昇格で有利になることはなかった」
前出の寺崎氏は、この10年間の新卒採用をこうまとめる。「高度成長期に高校や大学の新卒一括採用が定着した。それが現在も続き、中堅・大企業の採用の特徴となっている。大学の卒業時に正社員として就職できないと、その後もなかなかなれないが、これを“世代間の不公平感”という観点だけで捉えると、本質的な問題解決にはならない」。