地理の教師が独自の手法でランナーを育成
コルムが指導時にとりわけ重視したのが、体の使い方だった。彼がランナーに求める4つの要素に「F・A・S・T理論」というものがある。Focus(集中力)、Alignment(体の整列)、Stability(安定性)、Timing(タイミング)を意味しており、体のどの部分に意識を集中すれば理想的なランニングフォームを作れるかを、徹底して教え込むためのものだ。腕振りや接地、重心を意識することで、自然と体が前に進むランニングフォームを提案した。
また、自分のスタイルを押し付けるのではなく、ケニアの文化やランナーそれぞれの個性、動機の持ち方などに寄り添う指導スタイルを貫いた。今でこそ教師が生徒に、あるいは会社において上司が部下に寄り添うマネジメントスタイルは主流になりつつあるが、コルムは50年前からそれを実践していた。一緒に学びながら練習をアレンジする姿勢こそ彼が尊敬される理由であり、生徒と一対一で向き合う現代的かつ教育的なアプローチとも言える。
ケニアの陸上界は、ある日を境にいきなり強くなったわけではない。指導者の登場によって徐々にランナーが育成され、そうした先駆者たちの背中を見た若者たちが、次のスターを目指して挑戦していく。その繰り返しが、少しずつケニアを中長距離大国に押し上げていった。
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