障害年金受給で家計費から長女費を切り離し

後日。

【父親】「障害年金の件ですが、申請が通りそうだという連絡が入りました。障害年金は5年で時効になるとのことですが、娘は20歳前に診断を受けていたので、過去5年分の障害年金もまとめていただけるとのことです。娘名義の貯蓄が増えますので、本当にありがたく思っています」

【畠中】「障害年金は令和7年度の金額ですと、2級の場合で月に6万9308円がもらえます。そのほかに年金生活者支援給付金が5450円もらえます。合わせると、月に7万4758円がもらえる計算になりますね。

この金額の中から、娘さんにおこづかいとして月2万円を渡して、習い事代は上限月2~3万円、残る2万数千円から3万数千円は、将来のための貯蓄に回してはいかがでしょうか」

【父親】「娘自身にお金の管理をさせて、習い事代を払わせるということですね。娘にお金の管理をさせたことがないので、うまくいくでしょうか」

【畠中】「うまくいかなくても、管理できるようになる必要があります」

【父親】「そうですよね」

【畠中】「娘さんのおこづかいと習い事代を娘さん名義の障害年金から捻出できれば、ご両親の年金からの赤字はかなり減りますね。結果として、貯蓄が減るペースも緩くなります。80歳で支給が終わる個人年金(月4万円)のことも不安要素ですから、なるべく早く、赤字を減らしましょう。それとできれば、食費も1万円程度(現状月9万円)、削減したいところです」

【父親】「食費も多めということですか」

【畠中】「年金額によっては、多いとも言えませんが、赤字をできるだけ減らすために、食費を削減する努力もしていただきたいと思います」

【父親】「わかりました。妻に話してみます。ところで、障害年金はどのように管理させたらいいでしょうか」

【畠中】「たとえば、障害年金が振り込まれたら一緒にATMに行って、口座のお金は全額を引き出してはいかがでしょうか。おこづかいと習い事代を娘さんに渡して、4万~5万円の中でおこづかいと習い事代のやりくりをしてもらうんです。

そして、貯蓄に回す分は別の銀行の口座に移動させたほうが、確実に貯まるはずなので、いったん引き出した後、貯めるための口座に入金するとよいでしょう。障害年金を入金してもらう銀行と、貯めていく銀行は分けるということです。手間はかかりますが、娘さん自身にも、この銀行に移動させるお金は、あなたが将来、生きていくためのお金だからね、などと伝えていただくとよいですね」

障害者枠での就労を模索する

【父親】「いつまでも小学生くらいのつもりで接してしまっていました。ですが、いつかはひとりで生きていくわけですから、気持ちを切り替えて娘にやりくりのことなどを伝えていきます」

【畠中】「今まで管理をさせてこなかったとしても、今のままでは親亡き後、娘さんが必ず困ります。娘さんも40代に入られたのですから、お金のやりくりをはじめ、生活周りの手続きなども教えていきましょう」

【父親】「兄(45歳)がいるので、自分たちが亡くなった後は兄にやってもらうしかないと考えていました」

【畠中】「お兄様を頼るにしても、今のままだと、お兄様の負担が重すぎます。お兄様は現在独身とのことですが、仕事が忙しければ、妹さんの面倒まで見るのは現実的ではないですよね。それに、お兄様もこの先、結婚される可能性もあるでしょうし」

【父親】「小さいころから勉強ができないことで、いじめられてきた娘のことを、不憫に思って、娘のことばかり気にして生きてきましたが、兄には寂しい思いをさせてきたはずです。それなのに、娘を甘やかしたままにしていると、兄に重い負担を残してしまうんですね」

【畠中】「お兄様が妹さんの生活を支えるのは、大変すぎますね。娘さんは障害者手帳をお持ちですから、障害者の就労を支援してくれる会社を頼って、障害者枠で働くことも検討されてはいかがでしょうか。今まで働いたことのない一江さんが、いきなりハローワークに行って仕事を見つけるのはかなりハードルが高いと思います。それよりも、社会人としての作法から教えてくれるような就労支援会社を頼って、月数万円でも稼げる道を探すことが現実的ではないでしょうか。夢を諦めるように促すのではなく、夢を追いかけ続けるために、少しだけでも働いてくれないかという促し方になりますかね」

【父親】「障害者専門の就労支援会社があるんですね。いくつか教えていただいたので、まずは私が説明会に参加してみて、どこの会社にお願いするのか、検討してみたいと思います」

【畠中】「娘さんの場合、障害年金がもらえるとしても、働かないまま、一生暮らすのは難しいのが現実だと思います。娘さんにも働いてもらい、親御さんがご存命のうちに、少しでも娘さん名義の貯蓄を増やせるように頑張ってもらいたいところです。

障害年金のことや就労のことなど、一気に伝えても理解していただけない部分があるかもしれませんので、お母様も交えて、何度も家族会議をしてみてください。可能であれば、どこかのタイミングでお兄様にも参加してもらい、資産状況などをお兄様とも共有できるとよいですね」

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