「定年後、その後」のステージはフィンガーファイブ作戦で

このように考えてくると、70代に入るあたりに大きな区切りがあるといえる。「黄金の15年」(60~74歳)は、前半の60代後半までの「定年後」と、70代以降の「定年後、その後」とに分けることが妥当であろう。

「定年後、その後」世代では、幸福を追求するにあたって加齢というブラックボックスが存在感を増す。

それを踏まえたうえで、私は、「定年後、その後」には5つの寿命があると考えている。そして、それらを活かすための知恵を「フィンガーファイブ作戦」とネーミングしている。順番に簡単に見ていこう。

5つの付箋と数字の5
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「健康」「生命」の寿命

①ホントの寿命

「ホントの寿命」とは、文字通り生命体としての寿命である。何歳まで生きるかということだ。

70歳の人の平均余命は、男性は15.65年、女性は19.96年で、平均で男性は86歳、女性は90歳まで生きる計算になる(令和5年簡易生命表)。比較的長い時間が残されている。

②健康寿命

「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されない期間のことを指す。厚生労働省が3年ごとに国民生活基礎調査に基づいて算出しており、2022年の推計値では、男性が72.57歳、女性が75.45歳である。中高年向けの健康食品やサプリメントなどのPRではよく強調されている。

実際に70代以降の人に話をうかがっていると、大きな病気や肩・腰・膝の痛み、目や耳の機能の低下などで病院に通い、薬が手放せないと語る人も少なくない。

75歳前後の人を対象としたカルチャーセンターのセミナーで参加者に聞いてみると、3分の2の人が定期的に病院に通っていて、なかには「明日手術を受ける」という人までいて驚いたことがある。

そういう意味では、「定年後、その後」の世代になると、「健康寿命」をなんとか伸ばそうとするよりは、たとえ病気や障碍を抱えても、どうすれば充実した生活を送れるかにポイントがあると考えている。