「AGEsの残留量」に言及した論文はほとんどない
この点に関する研究は極めて限られており、明確な答えを出している論文はほぼ存在しません。ただ、過去に一度だけ、「どれだけのAGEsが体内に残留するか」を推定した論文があります。
その報告によれば、摂取した食品に含まれるAGEsのうち、約6.6%が体内に残るとされています。
ところが、この論文の主旨は、「腎機能が低下している場合、AGEsは排出されにくく、体に悪影響を及ぼす可能性がある」というものであり、食品中のAGEsの危険性を強調するための研究ではありません。
その論文に記載された「6.6%」という数字だけが独り歩きしているのが現状です。
では、この6.6%はどのような実験によって算出されたのでしょうか。
それは、「糖と卵白を80℃で1時間加熱し、真っ黒にした食品を摂取した場合」という実験です。その結果から論文の著者らが推定したのが6.6%という数値です。
真っ黒焦げになった食べ物はそもそも食べない
ちょっと立ち止まって、考えてみてください。
「食品中に含まれるAGEsのうち6.6%が体内に残留する」といわれれば「そんなに?」「怖い」と不安を感じるでしょう。
では、私たちが毎日の食事で真っ黒になったものを食べる機会はありますか?
加熱し過ぎた食品が健康によくないことは多くの人が直感しているはずです。そもそも、そんなまずいものを、人は本能的に拒絶します。
私たちが食べたくなるのは、こんがりとほどよく色づいた「おいしい料理」です。
その中にあるAGEs量は、真っ黒になったこの研究の試験食品と比べれば、はるかに少ないはずです。
以上をまとめれば、食品中のAGEs量はそもそも正確に測定できず、たとえそれを食べたところで体内に残留する量は極めて少ないと予測できます。おおむね健康な人であれば、腎臓で排出できる量ともいえるでしょう。
こうしたことから、通常の食生活において、食品中のAGEsを気にする必要はない、というのが私の見解です。
今後、私たちはこの分野についても研究を進め、正確なエビデンスを構築していく予定です。

