すでに専門チャンネルが続々撤退
実は、すでにBS4Kに参入した民放の撤退は始まっている。
スカパー!は、「J SPORTS 4K」「日本映画+時代劇4K」「スターチャンネル4K」など9チャンネルが2024年3月末に放送を終了。「WOWOW 4K」も2025年2月末、採算が合わないとして放送を終えている。
これに続こうとしているのが、民放BS4K5局。2027年1月の免許更新時に再申請しない方針を固めているという。「もう、これ以上、失敗した国策とは付き合えない」というのが本音のようだ。
民放5局が撤退すれば、2027年以降のBS4Kのチャンネルは、NHKの「BSプレミアム 4K」と、通販専門チャンネルの「ショップチャンネル 4K」「4K QVC」の3チャンネルのみとなってしまいそうだ(ほかに「OCO TV」が準備中だが開局に至るかどうかは不明)。
NHKは、自然・歴史・音楽・演劇などを中心に4K番組をそこそこに制作しているが、リーチ率となると9.3%で、1割にも満たない。通販専門チャンネルも、視聴者が集まらなければ、いつまで運用されるか予断を許さない。
さりとて、今後、BS4Kに新たな参入者が続出するとは考えにくい。放送衛星のトランスポンダ(中継器)はガラ空きになりそうで、衛星放送会社も対策を急がざるを得ないだろう。BS4Kという言葉が死語になってしまう日は遠くないかもしれない。
「日の丸家電」の復権を目指したが…
総務省がBS4Kを推進した背景と経緯をみてみる。
超高精細画質の4K放送が本格的に動き出したのは、2013年。
放送のデジタル化が地上放送を最後に完了したことを受けて、次なる放送行政の目玉施策として照準を定め、CSを皮切りに、BS、地上波へと展開する壮大な青写真を描いた。4Kは、既存の地上放送や衛星放送の画素数2Kの4倍、8Kは16倍で、鮮明で臨場感のある映像を楽しめることがウリだった。
そこには、「デジタル特需」の反動でテレビ市場が冷え込む中、テレビ需要を喚起しようという思惑があった。海外でも4K放送が導入されはじめた時期でもあり、海外市場での「日の丸家電」復権の期待も膨らんだ。
こうした動きを見越して、東芝やシャープ、ソニーの国内メーカーが次々に大型ディスプレーの4Kテレビを売り出した。
さらに、このタイミングで、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定。1964年の東京オリンピック・パラリンピックでカラーテレビが一気に普及した成功体験を思い出し、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックは4Kで」と二匹目のどじょうをねらう機運が盛り上がった。
このころは、まだネット配信はほとんど普及しておらず、映像メディアでテレビの王座は揺るがないという「テレビ神話」は健在だった。
総務省は、「2020年に4K・8K放送が普及し、多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K番組を楽しんでいる」という目標を立て、放送各局のネジを巻き、2018年12月には、BS4Kの本放送がスタートした。



