共感しちゃう人に会える場所
商業誌中心の1階から細い階段を上って2階に進むと、コミケで発表されたばかりの新刊が平積みされていました。「評論・情報系同人誌」とは、その名の通り、あるテーマに関する評論や情報をまとめた同人誌です。その対象となるテーマは、かなり幅広く、さまざまなジャンルに亘ります。
たとえば、その日に私が買い求めた同人誌のタイトルを列記してみましょう。
『GANSEN ~秋葉原の地下中華料理店・雁川の本~』、『そうだ、日本酒の違いをみてみよう。』、『素粒子ギジンカ物理学IV』、『銀塩時代 魅惑の4×4判二眼レフ』、『1万円からはじめる着物生活』、『東京銭湯 第三湯「渋谷区・港区・中央区」』。
私の好みに偏りがありますが、タイトルからも、その多様さは分かってもらえると思います。普段は真面目に話題にもされず、大手出版社が書籍化しても採算に合わないようなテーマですが、実はマニアックなファンがいて、販売量と流通ルートに工夫をすれば、大変喜ばれる本ばかりです。実際に、最初に挙げた『GANSEN ~秋葉原の地下中華料理店・雁川の本~』は、秋葉原に実在するある料理店のファンブックですが、コミケの会場で完売し、私が「COMIC ZIN」で手に取ったときも、残りわずかの売れ行きでした。
どんな人がこんなマニアックな本を執筆したのかとても気になりますが、同人誌の作者に会えるのはコミケのような同人誌即売会の時だけ。即売会では同人作家さんから手渡しで作品を購入できるので、同じ趣味の話ができたり、情報を交換したりとおまけの楽しみがあります。「コミケ4日目」にはその楽しみが味わえないのは残念です。
今回入手した作品は、どれも500円から1000円の値段で、B5やA5サイズで28~64ページの薄い本ですが、同人誌らしく、テーマに対する制作者たちの「好き」な気持ちが十分に込められていることが伝わってきます。同人誌はベストセラーの書籍やテレビのようにメディアとして大きな影響力はないかもしれませんが、共感を生み出し、同じ趣味嗜好の人たちを結び付けてくれるものだと感じています。そして、この同人誌の作者に会いたいと、またコミケの会場に足を運ぶことになるのです。