「東方project」の人気を知らない方に

「熱いコミケで、暑気払いしましょう!」(コスプレイヤー=あかね、撮影=筆者)

8月10日から12日の3日間、日本最大の同人誌即売会「コミックマーケット」、通称「コミケ」が、東京台場にあるビッグサイトで開催されました。今年は異常な猛暑が続いたことと、最終日が平日だったにもかかわらず、3日間でのべ59万人という過去最高の参加者数となりました。

同人誌とはもともと、同好の士と一緒に趣味で作った雑誌や本のことだったのですが、今では、個人で制作した商業流通には乗らない本も同人誌と呼ばれます。手にしたことがない方の中には、同人誌といえばいかがわしい内容の本だとの印象を持つ方も多いと思いますが、実際は、「18禁」(18歳未満は閲覧禁止の成人向け作品)だけではなく、一般向け作品もあり、作品形態も、マンガ以外にも小説、評論、写真集、グッズ、音楽、ゲームソフトなどさまざまです。

今回、私はある「壁サークル」の手伝いを兼ねてコミケに参加することにしました。「壁サークル」とは、その作品を求めて行列ができるほどの人気がある出展者(サークル)のことです。会場内で行列ができると通行の邪魔になるため、人気サークルは壁際に配置されることが多く、このように呼ばれています。

まずは搬入作業を手伝うため、レンタカー店で一番大きなワンボックスバンを借り、同人作家さんの自宅から同人誌が入った段ボール箱を車内いっぱいに詰め込んで、コミケの会場まで運び込みました。イベント前日にサークル仲間たちと会場で展示準備をしていると、気分がとても高揚します。

出展する同人誌は、「東方project」という作品の二次創作物です。二次創作物とは、元となるオリジナル作品(一次創作物)がある作品のことで、今回私が手伝ったサークルが出していたものは「東方」のキャラクターが登場するマンガ本。「東方」は同人サークル「上海アリス幻樂団」が制作するパソコン用シューティングゲームを中心とした作品群です。「東方」のゲームは、コミケのような同人誌即売会か、同人作品を専門で取り扱う同人ショップでしか目にすることができないので、世間一般にはほとんど知られていません。しかし、今回のコミケで約3万5000サークルが出展する中、2500を超えるサークルが扱う、最も主要なジャンルなのです。