若い時から処方され飲んでいる薬を、高齢になってもそのまま飲み続けても大丈夫なのか。上皇陛下の手術でも執刀した心臓血管外科医で、順天堂大学医学部特任教授の天野篤さんは「高齢者がずっと漢方薬を使っていると、どのような影響があるかについてのエビデンスは不足している。漢方薬以外についても、高齢になると、薬の効き方や副作用のリスクは変わってくる」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、天野篤『血管と心臓 こう守れば健康寿命はもっと延ばせる』(講談社ビーシー/講談社)の一部を再編集したものです。 

漢方
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漢方薬にも副作用はある

一時期のようなブームは落ち着きましたが、日本では「漢方」が根強い人気を保っています。原材料が天然由来である漢方薬は、西洋薬に比べて一般的に副作用が少ないとされていて、安全・安心なイメージがあることが大きな理由でしょう。

また、近年は漢方薬を処方する医師や医療機関が増えていて、医師の約9割が日常的に漢方薬を処方しているという報告もあります。ドラッグストアやコンビニなどでも手軽に市販品を購入できることもあり、漢方を常用している読者もたくさんいるのではないでしょうか。

しかし、漢方薬も「薬」ですから、効果もあれば、副作用のリスクもあります。つまり、使用する際には注意すべき点があるのです。なかでも深刻な問題といえるのが、「長期にわたって漢方薬を使っている高齢者」に弊害が出るのではないか、という懸念です。

漢方は約2000年前の中国で確立され、現代に伝えられてきた伝承医学です。日本には5~6世紀に伝えられ、その後、日本国内の風土や気候、日本人の体質やライフスタイルに合わせて独自に進化してきました。

高齢者の長期利用の影響はエビデンスが不足

先日、そんな「本場」にあたる中国の知人と話をすると、漢方薬は働き盛りの年代から初老期くらいまでの人が、医療機関で高度な医療を受けなくてもいいように使われているケースが多いといいます。

一方、日本の医療現場での漢方薬は、西洋医学でコントロールする必要がない人、または西洋医学だけではコントロールできない人に対し、西洋医学の補完的な治療として使われるケースが主流です。

いずれも、高齢者、とりわけ80歳を超えるような高齢者がずっと漢方薬を使っていると、どのような影響があるかについてのエビデンス(科学的根拠)が不足しているのが現状です。

また、若い年代から漢方薬を使い続けた場合、高齢化して体のあちこちが衰えて機能が低下したり、さまざまな病気を抱えたりしたときに、どれくらい有効なのか、どんな弊害があるのかについてもはっきりわかっていません。ですから、若い頃は漢方薬を常用して、とくに問題がなかったとしても、何十年もの間、漢方薬の影響を受けていると、それによって新たな病気や不調が生じる危険があるのです。