※本稿は、巽一郎『足腰復活100年体操』(サンマーク出版)の一部を抜粋、再編集したものです。
医学の定説「軟骨は再生しない」のウソ
よく聞かれる質問にこんなものがあります。
「ひざ軟骨は本当に再生するんですか?」
答えは「はい」。少しでも軟骨が残っていれば再生します。
定説みたいに「一度すり減ってしまった軟骨は再生しない」と言われているので、僕が「再生する」と言うと患者さんの多くが「にわかには信じ難い」という顔をします。
間違った情報も、信じる人が多勢だと、まるで真実のような顔をして広まってしまう。情報があふれ返っている現代ではよく起こることですので、要注意です。
実際、医学の教科書にも「軟骨は一度すり減ったら再生しない」「血管が乏しいため自然治癒能力が低い」と書かれています。それを読んだ医者が患者さんに「再生しない」と言うので、患者さんが信じるのも無理はありません。
しかし、本当は毎日からだを動かし、体重をかけることによって軟骨が削られても、毎日再生が行われています。それがからだに備わる「新陳代謝」の仕組みで、これは軟骨だけのことではありません。からだの細胞、すべてに言えることで、髪も爪も、皮膚も神経も入れ替わっています。
試しに、どこか皮膚の表面に油性ペンで日付を書いても、2週間もすれば文字はなくなっているはず。新陳代謝で皮膚がはがれ、入れ替わっているからです。
神経細胞も再生しないと信じられてきましたが、最近の研究で再生することがわかってきました。
軟骨だけ再生しない、と考えるのはむしろ「非科学的」「非医学的」なんです。
5ミリの包丁傷が数日でくっつく理由
一番大切なことを言うと、人のからだは連続性があれば再生するんです。
他院でもう手術しか方法がないと言われた多くの人が、切らないでひざ痛を卒業されています。軟骨は少しでも残っていれば再生します。しかし軟骨が減る生活習慣を続けていれば、減っていきます。
からだのすべての細胞が入れ替わる「新陳代謝」の仕組みは、僕らの命を守るとても大切なはたらきです。どんどん入れ替わって、フレッシュな細胞になり、命を活かして、古くなったらまた入れ替わる。これは幼少期も高齢になっても変わりません。
たとえば、キャベツのせん切りをしていて指を5ミリほど切って血が出たとき、どうしますか?
きっと、さっと洗って反対の手指で傷口を押さえ、出血を止めようとするでしょう。なかなか血が止まらないと思ったら、絆創膏でも貼っておきます。いくらかズキズキ痛んでも、「病院へ行かなくちゃ」とは思わないですよね。
2、3日して、傷口がひっついていたら「治った」と思う。みんな疑いません。確かに、概ね治ったのです。この傷口が治る過程に、人のからだが再生する仕組みがあるのです。
どういう仕組みで治ったか、これが肝心。みんな疑いもなく「治った」と思うのに、「どうして治ったか」はあまり考えません。だから自分に「治る力」があることを忘れてしまうのです。

