「レモン石鹸」で有名だったマックス
大阪・八尾市の一角に本社を構えるマックス。創業120年を迎える老舗メーカーだ。かつては、全国の小中学校で使われていた「レモン石鹸(※注1)」や、石鹸類をまとめたギフト商品を製造・販売していた。しかし現在は、全国のドラッグストアを中心に、肌にやさしいボディソープやヘアケア製品、入浴剤などを展開している。
そのマックスで経営の舵を取るのが、5代目社長の大野範子さんだ。
「幼い頃、2代目社長の祖父がよく私を抱っこし、工場内を歩きながら社員一人ひとりに『おはよう』と声をかけていました。そんな祖父の姿を見て心から尊敬していましたし、自分もいずれここで働こうと思っていたんです」
しかし、先代社長である父は、娘の入社に難色を示す。これまでマックスでは代々、男性が社長を務めてきた。そのため娘が入ればいずれ跡継ぎ問題がこじれるかもしれない。そう懸念していたからだ。
そこで大野さんは新卒で香料会社に就職し、営業職として歩み始める。一方その頃、マックスでは主力のギフト事業が低迷し、新規事業として、技術力を活用した他社商品を代理製造する「OEM事業」に活路を見出そうとしていた。
そして就職から3年。これまで頑なに反対していた父が、ある日突然「マックスに入社してくれないか」と切り出した。「注力していたOEM事業で、私の営業経験が役立つのではないか、という思惑があったようです」と振り返る。大野さんに当時の心境を聞くと、「とにかく、マックスに入れてうれしかった」と目を細めた。
※注1:レモンの香り(香料)を使用
ギフト事業に次ぐ「柱」になったOEM事業
1999年にマックスへ入社した大野さん。「この会社を企画・営業・技術の三拍子そろったメーカーへ進化させる」そう誓ってOEM事業に挑んだ。
2000年からは大手化粧品メーカーの受託生産に注力し、最盛期には全社売り上げの4割を占めるまでに成長。大手企業の専属工場として徹底的に鍛えられたことで、設備・品質・技術の水準は飛躍的に高まる。OEM事業は、低迷していたマックスを支える大きな柱となったのである。
しかし、2007年に長期契約を結んでいた大手企業から突然契約を打ち切られたことで、OEM事業のもろさが浮き彫りになった。取引先の事情に左右される事業を会社の主軸に据える難しさを痛感したのだ。
「自分たちにしかできない商品を育てていかなくてはならない」──。そうした思いが社内にも次第に広がり、新たな事業開発への必要性は一層高まっていった。
そんな折、父が体調を崩し「2年後に範子が社長になってくれないか」と打診される。青天の霹靂だった。



