<台湾における「日本の好感度の高さ」は他国の追随を許さない。なかでも大谷の「ある気質」に台湾人は魅了されている──:蔡亦竹(さい・いじゅ、台湾・高雄市在住の作家)>
「それは、大谷が出なかったから」昨年開催された野球の世界大会「プレミア12」で台湾は優勝。野球が国技の台湾人は狂喜したが、奇跡の日本戦勝利の後、そういう声が聞こえてきた。
もちろん、自国の勝利にけちをつけるのではなく、むしろ好敵手である日本への敬意を含む冗談だ。
来年3月に開かれるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の第6回大会でも日本と台湾の激突が予想されるが、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平がラスボスのように描かれたミームを最近、台湾のネットでよく見かける。
元シアトル・マリナーズのイチローは今も人気だが、それに比べても大谷は台湾で圧倒的な存在感を有している。なぜか。それは大谷のイメージが台湾人の持つ日本人像とあまりに合致しているからだ。
スポーツ選手は良い結果を出すと、その人物にまつわるエピソードやトリビアが出回る。台湾では「全盛期のイチローは自分が打ったヒットを、自分でキャッチできる」というミームがはやった。
それが、二刀流の大谷の場合は「投手・大谷の剛速球を打てるのは、打者・翔平しかいない」になった。
好青年然とした顔立ちで、正直かつストイックに見える大谷は、台湾の野球ファンから「高校生」というあだ名を付けられている。日本のアニメ文化を愛してやまない台湾人にとって、二刀流の大谷はまるでマンガの世界から現れてきた主人公のような存在。
「こんな選手がいるわけない」と思っていたら、メジャーリーグに行っていい成績を上げ、気が付けばワールドチャンピオンになった。まさに「マンガでさえ読者に怒られる」ストーリーだ。

