上官の命令に背くことはほぼ不可能

この戦争犯罪の問題に関連して、2004(平成16)年、陸上自衛官用に刊行された服務参考書『陸上自衛隊 新服務関係Q&A 改訂4版』は「Q8 職務命令に瑕疵がある場合にも服従義務があるか」との問いに「瑕疵(欠陥)ある命令も原則として有効」であり、服従の結果なされた行為については、命令を発した上官が責任を負うことになる、ただし命令が重大かつ明白な違法の瑕疵を有する場合は無効であり、隊員は服従すべきではない、服従の結果なされた行為には命令した上官のみならず服従した隊員も責任を負う、と解説している。

違法な命令に従う必要はない、というのだが、その一つ前の「Q7 職務命令が適法か否か判断しがたい場合には、いかにすべきか」に対しては「にわかに判断しがたい場合には、当該命令は適法の推定を受けるので、隊員はこれに従わなければなりません」「知識、経験ともに長じている上官の判断を信頼して、受令者はこれに従うべきものとされています」「違法かどうか、疑わしい命令に従わなかった場合には、一応抗命ないし不服従の責任が問われることになります」と解説している。

その半世紀近く前の1960年、航空幕僚監部の2等空佐寺本光は防衛庁人事局第一課編『自衛官本質論』所収の論文「自衛隊の命令と服従」で「命令が、客観的に極めて明白な違法である場合には、これに服従する義務はない」としつつも「命令が適法性を欠く疑いがあるか、または合目的性を欠くという判断だけで、服従を拒否することはできない(この場合理論的には適法要件を欠く無効である命令に対しては服従の義務は阻却されるが現実的には適法であるという推定性があるので服従の義務を免れ得ない)」と述べている。