本番に弱い、口下手、3日坊主……若い頃からの性質は変えられないと諦めてはいないか。人気の脳科学者が、誰でも、何歳からでもできる「自分を変える」法を伝授する。

創造力を効果的に鍛えるには

「自分のここを変えたい」「こうなりたい」という様々な希望に対して、具体的な解決法を説明していきましょう。

【悩み】歳とともに記憶力が衰えてきました
【処方箋】新聞の社説を批判的に読んだり、ピアノ演奏をすると効果的です

歳とともに記憶力が衰えてきたと嘆く人は多いですが、もしそれが「人の名前が覚えられなくなった」という程度のことであれば、気にしないほうがいいです。単純な事柄に関する記憶力は、20歳を過ぎると次第に衰えていきます。覚えたいことは、繰り返しによって定着させるしかありません。

一方で、複雑な物事を「理解して、覚える」という記憶力は加齢で衰えませんし、むしろ鍛えれば伸びます。なかでも効果が高いのは、ピアノの演奏。両手を同時かつ複雑に動かし、楽譜を一時的に記憶しながら弾くので、脳をかなり使います。新聞の社説を批判的に読むのも、この記憶力の向上に効きます。毎日テーマが異なるので知識が増えますし、批判するためにはさらなる知識を使います。これを日々の習慣にすれば、判断力や決断力など別の能力も磨かれます。

【悩み】他人とうまくコミュニケーションできません
【処方箋】日記を書いて、自分自身を客観視することを習慣化してください

「コミュニケーション能力を上げたい」「うまく人間関係を築けるようになりたい」という人は、メタ認知をもっと働かせるように努力してください。メタ認知とは、「自分の言動が他人からどう見られているかについての意識や視点」です。したがって、自分自身を客観視することを習慣づけてください。具体的にいうと、日記を書くことが効きます。ツイッターやフェイスブックなどのSNSで意見を発信するのもいいでしょう。「読んだ人はどう思うだろうか?」という意識が生まれ、メタ認知を向上させる訓練になります。ただし、習慣化することが重要。癖にしないとなかなか変わりません。

同僚やプロジェクトで組む相手との協調性を高めたいのなら、その人に触れてみてください。バレーボールでは円陣を組んで手を重ねたり、監督が選手の肩を叩いたりするのをよく見かけます。あれには、オキシトシンという女性ホルモンを分泌させ、親和性を高める効果があります。オキシトシンは男性にもあり、脳内にも存在することがわかっています。ただし、あくまでも信頼できる相手にのみ有効です。イヤだと思っている人に触ったり触られたりすると、緊張ホルモンが出てしまいます。当然のことながら、セクハラと言われないように注意してください。