一生をかける仕事として念頭にあったのは教育の仕事だった。学生のころ流行った学園ドラマが気持ちのどこかに残っていた。1年かけてリーダー教育のコンテンツを練り上げた。シンガポールに拠点を移したのは07年。きっかけは語学の体験留学だ。

「体験留学にきているのは若い人ばかりで、40過ぎのオジサンは自分ひとりだけ。そのとき強く感じたのは、これまで自分は業界で井の中の蛙だったけれど、今度は日本で井の中の蛙になってしまうという危機感でした」

現在の活動の割合はシンガポールと日本で8対2。準備をシンガポールで行い、日本でアウトプットするスタイルだ。

「お金は頑張って稼いで、しっかり使ったほうがいい。お金がなくてものんびり暮らせればいいという人もいますが、それは自分勝手な考え方。お金があれば、自分以外の人を幸せにすることができます。事業を起こせば、人を雇用できるし、税金を納めることもできる。

まわりの人に何か与えようと行動していると、相手に裏切られたり、何も反応がなくてがっかりすることもあります。でも、人のために10やったら、9はやり損でいい。残りの1が花開いて損を埋めてくれます」

(文中敬称略)

リーダーズアカデミー学長 嶋津良智
1965年生まれ。IT系ベンチャー企業を経て、93年に独立、起業。翌94年、2人の経営者と情報通信機器販売の新会社を設立。3年後、出資会社3社を吸収合併。実質5年で年商52億の会社まで育て、2004年、株式上場(IPO)を果たす。05年、次世代リーダーの育成を目的とした教育機関リーダーズアカデミーを設立。07年、シンガポールに拠点を移し、活動を続けている。
(村上 敬=構成 葛西亜理沙=撮影)
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