クラウンライン・グループCEO 
森 幹雄氏

1977年、24歳のときシンガポールに渡りました。当時はマレーシアから独立して12年目。これから経済成長を遂げる国特有の熱気に満ち溢れていました。その上昇気流に乗り、27歳で立ち上げた海外専門引っ越し会社は、売り上げ約42億円の企業グループへと成長しています。

ただ、ここは約束の地ではありません。移住して35年、一旗揚げようとやってきたものの、夢破れて帰国した人たちも大勢見てきました。

彼らと成功者の違いが3つあります。まずはニッチなマーケットを狙って、まだこちらにない商品やサービスで勝負しているかどうか。

次に、共生共存の精神があるかどうかです。狭いこの国では、値下げをしてローカルの競合をつぶすようなやり方では、まず生き残ることができません。他人の国で軒の下を借りるのですから、それはあたりまえのルールなのです。一緒に働く社員に対しても、ただ単にこき使うのではなく、一緒に未来を共有できるか、そういう人間を選んで仲間にしていくことができるかが重要です。

最後はフィロソフィーです。いい車に乗りたい、いい家に住みたいという思いだけで頑張ってきた人は、一時的に成功しても、いずれお金におぼれて沈んでいきます。はじめは自分の物欲を満たすためでいいのです。しかし、どこかでそれを「アジアの人のため」「産業の発展のため」といった大きなミッションに切り替えていく必要がある。これは日本人にかぎりません。フィロソフィーがない人は、国籍や人種を問わずリッチにはなれない。これは世界共通のルールだと思うのです。

クラウンライン・グループCEO 森 幹雄
アメリカを経て、シンガポールで海外引っ越し専門会社を設立。8カ国16都市で事業展開する。著書に『アジアで負けない三流主義』。
(構成=村上 敬 撮影=葛西亜理沙)
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