※本稿は、司拓也『信頼される人の話し方 軽く見られる人の話し方』(KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。
話すときに「相手の眉間」を見るのはダメ
人前で頭が真っ白になる。人と話すときの不安感や違和感が消えない。話が上滑りしてしまう。これらの悩みの根源は、多くの人が信じている「アイコンタクトの常識」にあります。
「眉間を見て話せばいい。相手から見て目が合っているように見える」という呪い。本やネットでよく見かけるこのアドバイスこそが悲劇の始まりです。
私たちは幼い頃から「目を見て話せ、しかしジロジロ見るな」という矛盾した命令(ダブルバインド)を刷り込まれてきました。結果、思考停止に陥り、安易な解決策として「眉間を見る」ことに飛びついてしまうのです。
たしかに相手から見ると目が合っているように見えるかもしれません。しかし私は次の理由であえてこの説に反対します。
目が合わないと感情が伝わらない
悲劇1 あなたは「感情のない人形」だと思われる
眉間を見ているあなたの瞳孔は、相手にピントが合っていません。相手からは、焦点の合わない「死んだ目」に見え、情熱も謝罪も心に響きません。「何を考えているか分からない不気味な人」という印象を与えてしまいます。
悲劇2 あなたは相手の「本音」を永遠に知ることができない
感情が最も表れる「目」。興味があるときの輝きや、嘘をつくときの微細な動きなど、言葉以上に雄弁なサインを見逃してしまいます。相手の心の扉が開く瞬間を、自ら閉ざしているのです。
悲劇3 あなたはますます「自信を失う」
相手の感情を読み取れないため、あなたの話は独りよがりになります。当然、相手の反応は薄くなり、あなたは「自分は話が下手だ」「嫌われているんだ」と誤解し、自信喪失の悪循環に陥るのです。
逃げの姿勢が信頼を無くす
今すぐ試してください。目の前にいる人(もしいなければ、いると想像して)の眉間をじっと見つめながら、「こんにちは」と挨拶してみてください。
どうですか? あなたの視界に映っているのは、豊かな表情を持つ「人間」ですか? 違いますよね。感情も魂も感じられない、顔なし『のっぺらぼう』が見えませんか?
私たちは、のっぺらぼう相手に、心からの言葉を届けられるほど強くはありません。得体の知れない存在を前に、不安になるなという方が無理な話です。
「相手から見たら目が合っているように見える」というのは、所詮、あなたの“逃げ”でしかありません。その逃げの姿勢、不安は、空気のように相手に伝播します。あなたの信頼を静かに蝕んでいくのです。

