セミナーは2日間にわたり、中村が参加したときは、30人以上が会場に集まった。討議しやすいように机を囲んで5~6人ずつで1つのグループをつくる。

中村のグループには、IT企業や市役所など勤務先がさまざまなメンバーがいて年齢は40代が中心だった。

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図2 信頼されるリーダーの13の行動

1人のファシリテーターがプロジェクターを用いてカリキュラムを進める。情報・知識労働者の時代とは何か、リーダーシップの重要性、ボイスの見出し方、リーダーの4つの役割……とテーマごとに5分から10分程度のビデオ映像が流れ、その内容についてグループ討議や発表がある。次いでビジョンづくりなどの演習を行い、最後にファシリテーターがまとめるというのが基本的な流れだった。

「演習で『信頼されるリーダーの13の行動』(図2)が出てきたときには、日頃の自分を省みました。他者を尊重する、まずは耳を傾けるなどは、自分に足りない部分だと感じて丸印をつけました。支援型のリーダーシップが望ましいと頭ではわかっていても、心からそう思わなければ行動できません。常に意識しようと、セミナーの翌日、出社後すぐにデスクのパソコンに『人の話を聞く』と貼り紙をしました」

セミナーの最後に全員が発表する「明日からの行動」でも、ミスに寛容になる、笑顔で人と接する、自分と違う意見をすぐに否定しない、などを盛り込んだ。

それでも、トップダウン型だった中村には、部下の言葉に耳を傾けることはときには忍耐の要ることだ。

「しょっちゅうイラッときていますよ。でも、貼り紙を見て傾聴の大切さを自分に言い聞かせています」