店長によって業績が2割も3割も変わる

中村はいま、人事管理や組織づくり、採用、教育を統括する責任者だが、人事部に異動してまだ1年足らずである。

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図3 信頼性の4つの核

入社以来ずっと営業畑を歩み、店長、複数店管理のマネジャー、地方エリアの営業責任者、新規事業の立ち上げなどで業績をあげてきた。そしてストアオペレーション部では、店長教育はじめ人材育成に取り組んだ。昨年4月に人事部長に抜擢されたのは、その実績が認められ、全社的な人材育成に取り組んでほしいと望まれたからだった。

今回のセミナーも、人事制度や人材育成の観点から、また現場での経験と照らし合わせて、深く理解できたことが多々あった。

「人は何によって相手を信頼するか、という話も印象に残りました。樹木の根っこが人格で、枝や葉が能力という絵です(図3参照)。私が知っているレストラン事業ではまさにその通りだと腑に落ちました」

人事部長になって、自分にとって衝撃的な体験だった360度評価制度を社内に導入した。すると高い成果を出す店長たちは、部下との信頼関係やコミュニケーションが高水準にあることがスコアに表れた。業績のいい店の特徴といってよい。

『7つの習慣』『第8の習慣』ともに何度も読んできた。社内でも広めていきたいと考えている。

例えば、電気・ガス・水道などの経費削減に取り組む場合、従業員が節約しようと行動を変えないかぎり成果は出ない。店長が信頼されている店は、職場全体で着実に活動が進んでいく。そこには店長の人格と能力が大きく影響していると経験的に納得できた。

「この業界は、店長によって業績が2割も3割も変わってきます。強い店づくりは、強い店長づくりからです。ただ近年は、目標をめざして部下を叱咤激励するトップダウン型は必要とされません。店長も支援型リーダーシップで、メンバーに力を発揮してもらうほうが好業績に結びつきます」

そのような現場の状況を直に知っているからこそ、「第8の習慣」がめざす「偉大なリーダー」をイメージでき、自ら実践していく価値もある。