理路整然と語られる内容は厳しい。あるインタビューで、日本の経済力が鈍化した原因は何だと思うかと問われ、「競争を回避しようとする」「成長に貪欲じゃない」と他社の経営者には耳の痛いことも冷静に言い放った。
「話す内容はかなり強いのに、実際はそれほどキツイ印象を与えません。小柄な体格と、顔の表情があまり変わらないせいです。意外と敵をつくらないタイプです」(日本大学芸術学部教授・佐藤綾子氏)
話している最中の柳井さんは、伏し目がちでアイコンタクトは弱い。口元の動きも小さく、威圧感がないのだ。
「まばたきが多いのも特徴です。日本人のまばたきは1分間に平均34回ですが、柳井さんはその2倍以上。途中でカウント不能になりました。そのため、相手を強く睨みつけることがないのです。普通の人がこのような表情で口元を動かさずに話すと、ほとんど内容が伝わりません。柳井さんの場合は、『いい声』がそれをカバーしているのです。ちなみに、ここまで表情筋の動きが小さい経営者は珍しく、私のパフォーマンス学30年の歴史ではミサワホーム創業者の三澤千代治さん以来、2人目です」(佐藤氏)
柳井さんの話し方を安易に真似すれば、慎重すぎて自己アピール力に欠けると見られる。「いつも浮ついている」と他人から指摘される落ち着きのないタイプなら、フォーマルな場面で参考にするのはいいだろう。
柳井さんのマネして
うまくいくポイント、大コケするポイント
○「低い声」を心がける
×伏し目がちになる
×キツイことを言った後、フォローしない
×地方出身ではないのに方言を使う
(小倉和徳、若杉憲司、澁谷高晴=撮影)