倒産の危機、成長期……。さまざまな場面で経営者たちは文章に思いを込める。受け手が感化される文章は、何が違うのか。カリスマ経営者の側近が証言する。

新しい年を迎える元日の午前0時ちょうどに、ファーストリテイリングの全社員に向けて1通のメールが発信される。送信者は柳井正会長兼社長。毎年恒例となっている「年頭挨拶と年度の方針」だ。

2012年に送られたメールは、A4用紙にして3枚前後。話題と語り口は年ごとに異なるが、全体の構成はほぼ共通している。まず冒頭で、前年の業績や自社を取り巻く経営環境を振り返りつつ、トップとして抱く危機感、それを踏まえた今年の標語が示される。後半は、全社員一丸となって目指す会社の姿、1人ひとりに期待するマインドが訴えかけられる。表現も次第に社員の心を揺さぶるような熱気を帯びてくる。