スーパーやコンビニで手に取った食品の裏を見れば、必ずといっていいほど「食品添加物」が目に入る。元農林水産大臣の山田正彦さんは「法令によって表示が義務付けられているが、欧米より広く一括表示が認められている。使用された全ての添加物を知ることができず、消費者には不親切な制度になっている」という――。

※本稿は、山田正彦『歪められる食の安全』(角川新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

昔ながらの「にがり」も添加物

そもそも食品添加物とは何か。食品衛生法では次のように定義されている。

添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物をいう。(第4条第2項)

堅苦しくてわかりづらいので、身近な食品で考えてみよう。

例として豆腐を挙げる。豆腐は次のような工程で作られる。まず大豆を水にひと晩さらし、砕いた上で煮る。布を敷いてこす。この過程で絞られた液体が豆乳で、布上に残ったものがおからだ。豆乳に「にがり」と呼ばれる凝固剤を混ぜて、固めたものが豆腐となる。

にがりの混ぜ方や固め方、その際の温度などはメーカーによって異なるが、とにかく凝固剤を抜きにして豆腐は作れない。この凝固剤が食品添加物だ。現時点で塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、グルコノデルタラクトンの5種類が豆腐用凝固剤の食品添加物として許可されている。

先ほど述べたにがりが含まれていないが、にがりの主成分は塩化マグネシウムであり、一つめの添加物にあたる。

昔ながらの製法であるにがりで作られると、大豆のうま味や甘さが引き出された豆腐ができあがる。ただ、にがりは凝固するまでの反応時間が早く、技術的にもむずかしい。そのため、使い勝手のいい他の凝固剤が使われるケースが少なくない。

日本には海外で禁止されている添加物も

食品添加物に対する規制は、明治時代から始まっていた。明治維新以降の開国とともに次々と輸入された外国産着色料の使用が禁止されたのが最初の取り締まりだったとされている。

法律によって初めて規制されたのは戦後まもない1947年。食品および添加物の基準や表示、検査などの原則を定めた「食品衛生法」で、合成された化学物質、つまり化学的合成品の食品への使用を原則禁止とした。その例外が食品添加物であり、所管する厚生省によって安全・安心が確認され使用が許可されたのは、当初はわずか60種類だった。

しかし、時代や技術の変化とともに食品添加物の定義も変わっていった。いったん許可されながら使用が禁止された食品添加物がある一方で、新たに許可されたものの方が圧倒的に多い。

おにぎりを選ぶ買い物客の手
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

現在、日本で食品添加物として登録されているものは1518品目にのぼる。4つに分類され、そのうち消費者にとって重要なのは指定添加物と既存添加物なので、実際には前者の476品目、後者の357品目を合計した833品目が比較する数だ。

安全性試験を通過したもののみが許可を得ているが、この評価は絶対ではない。日本では許可されながら、海外では禁止されているものもある。