他人の言動に怒りが爆発しそうなとき、感情をどうコントロールすればよいか。認知科学者で東北大学准教授の細田千尋さんは「正論ありきで論理的に相手を詰めていくと、ロジカルハラスメントになりかねない。まずは、なぜその状況になったのかを相手と一緒に振り返るといい」という――。

※本稿は、細田千尋『幸せを手にできる脳の最適解 ウェルビーイングを実現するレッスン』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

認知科学者で東北大学准教授の細田千尋さん
撮影=塚原孝顕
認知科学者で東北大学准教授の細田千尋さん

ブチ切れ寸前「怒りのスイッチ」の切り方

わき上がる怒りをどのようにコントロールするか、他者に対する苛立ちや怒りなどの感情の扱い方を紹介します。これらは個人差や特性の問題がかなりあり、苦手とする人も多いようです。

ふつふつとわき上がってくる怒りの感情を、いったいどのようにコントロールすればいいのかという問題です。それには、認知行動療法の考え方がヒントになります。

認知行動療法では、わたしたちの感情や行動は、出来事そのものではなく、出来事に対する考え方や解釈によって影響を受けると考えるということでした。そこで、怒りの感情についても、その感情を外在化する(適切に表現しコントロールする)ために、考え方(認知)と行動に焦点を当てていきます。

感情をコントロールする3つの方法

怒りの感情を外在化するための手法にはいくつかありますが、ここでは主に3つ紹介します。

①自己観察
怒りを感じたときの状況、考え、感情を記録してみましょう。そこで表れた身体反応や、自分が取った行動なども含めて記録します。日記でもいいですし、専門的には「行動記録表」や「自動思考記録表」などを用いて、怒りのパターンやトリガーを特定していきます。自動思考記録表は、厚生労働省のホームページでも公開されています。

②認知の修正
怒りを引き起こす考え方(認知)に焦点を当て、その妥当性を検証します。例えば、「べき思考(〜すべきだ、〜すべきでない)」という考え方に固執していませんか? 他にも「過度の一般化(いつもこうなる、誰もわたしを理解してくれない)」などもチェックすると、認知の歪みに気づけるようになります。

③問題解決スキルの向上
怒りの原因となっている問題を特定し、具体的な解決策を考え、実際にそれを実行する練習をしていきましょう。問題解決スキルが上がると、怒りの原因を自分の力で解消できるようになり、感情のコントロールにつながります。

これらの考え方や行動がなかなかできないからこそ、多くの人は悩むわけですが、認知行動療法としては、一般的に上記に示したようなことを行っていきます。

ここで、あくまで個人の一例として、わたし自身が苛立ちや怒りに直面したときの対処法についても、具体的に紹介します。