よりセンシティブな機密文書を隠し持つ?

転機は翌06年に訪れた。ネットワーク・セキュリティの技術者を募集していたCIAに採用されたのだ。このときスノーデン氏は、高校中退のギーク(コンピュータに詳しい「オタク」)である自分が、年収10万ドルを超える政府の仕事に就いたことを誇らしげにチャットに書き込んでいた。

実はスノーデン氏のこの後の3~4年間の足取りについては、7月4日に米「ニューヨーク・タイムズ」紙が報じるまで明らかにされていなかった。この間同氏はハワイでNSAと契約するデル社と契約していた。デルもNSAとインテリジェンスに関する契約を交わしていたが、ここで働く間にスノーデン氏は単なるコンピュータシステムのスーパーバイザーから、「サイバーカウンターインテリジェンス(防諜)のエキスパートになるための訓練」を受けていたという。そこでは、サイバースパイからシステムを防御するため、攻撃者の立場からの事態を想定するなど、ハッカーとしての高度なハッキング技術を含めた、サイバー攻撃の技術も各種習得していたという。

このような特殊な訓練を受けた後、スノーデン氏はNSAと契約する民間会社ブーズ・アレン・ハミルトンに転職したのだが、その理由について同氏は、「世界中の機密情報にアクセスできるポジションであったため」と香港紙に語っている。言葉通りなら、最初から機密情報の暴露が目的だったわけだ。

米政府は機密に携わる民間請負業者が国家を裏切らないように高給を払っており、スノーデン氏も同社で約20万ドルの年収を得ていた。好待遇を蹴って暴露した同氏は確信犯といえるだろう。

米政府は、相当厄介な人物に裏切られてしまったようだ。スノーデン氏は機密の文書にアクセスした痕跡を残さずに多数の機密ファイルを入手した可能性も十分にあり、これまで公開したもの以上にセンシティブな機密文書をどこかに隠し持っているはずだ。

スノーデン氏の言動が、引き続き世界中から注目を浴びるのは間違いないようだ。

(写真=Human Rights Watch/AP/AFLO)
【関連記事】
サイバー犯罪 「安価なスパイ」が弄ぶ丸腰・日本の危機【1】
大きすぎる「内部告発」のリスクとは
ネットにうっかり会社の内部情報を書き込み
契約の切り札「反社会的勢力でない事の表明・確約書」とは
ネット履歴を「残せ」警察庁vs「消せ」総務省