欧州は英EU離脱に疲れ果てている

英国のEU離脱交渉が10月末に延期されたことを受けて、ロンドンの市民のムードは弛緩してしまった。政争に明け暮れる与野党に対してロンドンの有権者は疲れ果てている。一方でEUの官僚のストレスもピークに達している。このままでは多くの人々が当事者意識を欠いたままで交渉の期限が到来するかもしれない。

英国独立党(UKIP)の元党首で、4月に新党のブレグジット党を結党したナイジェル・ファラージ氏。離脱派の「顔」として知られている。(写真=EPA/時事通信フォト)

メイ首相が辞任しても事態は変わらない

英国の欧州連合(EU)からの離脱は混迷を極めている。従来、ロンドン時間の2019年3月29日午後11時に予定していた英国のEU離脱は、離脱の方針をめぐる国内の混乱を受けて、期限が10月末まで延期されることになった。これはEUによる「温情」であり、英国の国際的な対面は大きく傷つくことになったと言えよう。

自らが離脱のトリガーを引いたにもかかわらず、英国のEU離脱の方針をめぐる方針は現在に至るまでまとまらない。5月下旬には与野党協議も決裂し、6月にはメイ首相の辞任に向けた動きが加速しそうな機運が高まっている。

与党保守党からは、いわゆるハードブレグジッター(離脱強硬派)を中心に、メイ首相の後任を狙う議員が名乗りを上げている。かねてから強硬な態度を取るボリス・ジョンソン前外相は、その典型的な人物だ。

ただメイ首相に代わって離脱強硬派の首相が誕生しても、10月までに英国がEUを離脱できるか定かではない。英国の議会は7月から夏季休暇に入り、再開は9月となるため、この間に具体的な進展は見込めないからだ。