いま勢いに乗る「女芸人」が目立っている。3月6日放送の『R-1ぐらんぷり』の決勝では10人中4人が女性となった。昨年12月には、女芸人だけの賞レース『THE W』も開催された。ライターの西森路代さんは、「女芸人はこれまでデブとブスというキャラが過剰に求められてきたが、今変わりつつある。人を傷つける笑いが通用しなくなってきたからこそ、女芸人が目立っているのではないか」と分析する――。

「R-1」決勝の半数近くが女芸人

いま勢いに乗る「女芸人」が目立っている。3月6日に放送される『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ系)では、決勝に進んだ10人のうち、カニササレアヤコ、河邑ミク、ゆりやんレトリィバァ、紺野ぶるまの4人が女性だった。

『R-1ぐらんぷり』ホームページ

そんな動きを象徴したのが、昨年12月11日に日本テレビ系列で放送された『女芸人No.1決定戦 THE W』だ。日本テレビは、人気番組の『世界の果てまでイッテQ!』でイモトアヤコをはじめ、多数の女芸人を世に出しており、番組人気を支える要因の1つといってもいいだろう。同時に、ネタ番組としては『エンタの神様』を擁し、いわゆる“キャラ芸人”を多く世に売り出してきた。今回の『THE W』も、そうした“日テレらしさ”を感じる大会になっていた。

「現役芸人」不在の『THE W』審査員

今や女芸人をテレビで観ない日はないし、テレビや舞台上で男芸人と扱いに差があるのか、疑問を持つ人もいるかもしれない。『THE W』に対して、「わざわざ女性だけ分けて大会をやる意味はあるのか」と疑義を呈している人もいた。私自身は、男女別で大会をやることには反対ではない。「キングオブコント」や「M-1グランプリ」などその他の賞レースでは、毎回審査員がほぼ全員男性であることからも明らかなように、お笑いの世界はずっと男性主導で来ている。その枠組みから離れ、女性のお笑いだけで競い合う試みがあるのはよいと思う。

しかし、そのぶん審査形式については疑問が残った。『THE W』の審査は、ヒロミ、生瀬勝久、新川優愛、吉田沙保里、若槻千夏、柴田理恵という6名の「ゲスト審査員」と、一般公募から選ばれた395名の「一般審査員」によって行われた。つまり、審査員のなかに芸人はヒロミただ1人だったわけだ。賞金は1000万円でほかの賞レースと変わらないし、優勝者は視聴率が合計100%になるまで日テレの番組に出られるという副賞はユニークだ。それだけに、審査員の人選が気になった。ほかの賞レースでは審査員を務めるダウンタウンの松本人志も呼ばれていたが、『THE W』では副音声解説のみで、ジャッジを行うことはなかった。