政府は女性管理職の比率を上げようと、さまざまな施策を講じている。しかしスキルもやる気もあるのに、出世や昇進を「遠慮」する女性は依然として少なくない。なぜなのか。その背景には、金銭や肩書きなどの「外的報酬」はあっても、自己成長や充足感などの「内的報酬」に乏しいという日本企業の問題点があった――。

なぜ高学歴女性は出世・昇進に消極的なのか?

厚生労働省の「2016年度 雇用均等基本調査」によれば、2016度の女性の課長相当職以上の比率は12.1%、係長相当職以上の比率は12.9%にとどまり、女性の管理職比率は著しく低いのが現状です。

2016年4月に施行された女性活躍推進法を契機に、女性管理職比率を数値目標として掲げた企業も少なくありません。しかし、女性管理職を増やすことは、そう簡単ではありません。

難しい要因は、主にふたつ挙げられます。ひとつは、仕事と家庭の両立が困難という物理的な要因。もうひとつは、女性のキャリアへの消極性という心理的な要因です。

本稿では、日本総合研究所が2015年に調査・発表したアンケート調査結果(「東京圏で暮らす高学歴女性の働き方等に関するアンケート調査結果(報告)」(以下、「アンケート調査結果」)のデータから、高学歴女性のキャリア意識の特徴について取り上げたいと思います。

【高学歴女性の社員の特徴1:出世・昇進への関心が低い】

アンケート調査結果では、25歳から44歳の女性に対して、かつての就職活動時点、およびアンケート回答時点(2015年)におけるキャリアに対する意識について尋ねています。アンケート回答時点では、就活時点に比べると、多くの女性が結婚・出産などのライフイベントを経験しています。

まず、アンケート調査結果によれば、「出世・昇進のために働くことが重要だ」と考えている女性(「そう思う」「強くそう思う」と回答した女性)は、結婚・出産などのライフイベントを経験する前の就活時点ですら、約2割にとどまっています。アンケート回答時点においても、その傾向はほとんど変わりません(図表1)。女性は出世・昇進への関心が低いという特徴が挙げられます。