どうせ瞑想をするのであれば、きちんとしたやり方やその効果を知っておきたい。一度覚えてしまえば、自宅でも通勤中でもどこでも好きなときに行える。自分にあったやり方がきっと見つかるはずだ。
教える人:臨済宗妙心寺派本山塔頭 春光院 副住職 川上全龍
2004年に米国アリゾナ州立大学宗教学科卒業。06年より訪日観光客を対象に英語で座禅の指導を始める。TEDxKyotoでもマインドフルネスに関するスピーチを行った。マインドフルネス・アプリ「Myalo(ミャロ)」共同開発者。著書に『世界のトップエリートの集う禅のクラス』(3月30日発売予定)

<集中瞑想>疲れた脳をデフォルト状態に戻す

会議中に思わずぼんやり。その次の瞬間、過去に自分の中に蓄積していた情報と、会議の初めのほうに聞いていた情報が突然結びつき、思わぬひらめきを得る……。そんな体験をしたことはないだろうか。

「それは疲れた脳がエネルギーをセーブしようとして、デフォルトに入ってる状態なんです。ぼんやりしていても脳内のデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)は活性化していて、働いているんです」(臨済宗妙心寺派本山塔頭 春光院 副住職 川上全龍さん)

会議中のぼんやりでひらめきが得られたのはあくまで偶発的だが、これと同じ、脳をデフォルト状態へ意識的に向かわせるのが、瞑想の基本となる集中瞑想だ。

やり方としてはとてもシンプル。自分の呼吸、雨だれの音、自分の体の一部など、単調で刺激の少ない対象に注意を向ける。一番やりやすいのは呼吸に注意を向けること。基本の姿勢をとり、呼吸に意識を向けてゆっくりと息を吐いたり吸ったりを繰り返してしばらくすると、注意が散漫になってくる。このとき「まずい! 意識が散漫になってダメだ」と否定せず、「ああ意識が散漫になったな」とその状況を受け入れた後、またゆっくりと再び呼吸に意識を戻す。この繰り返しだ。

注意したいのは、「集中」の意味。集中瞑想の「集中」は瞑想中に外部からの刺激にも気づかないくらいにじっと「集中」するという意味ではない。呼吸など、なにか一つに集中することだ。

「目指すのは、『リラックスした集中』です。私は60名ぐらいを相手に座禅を教えているとき、誰かが足を組み替えたり、飽きてきて呼吸が変わった、など周りの動きが大体把握できるんです。このように1カ所だけに集中しているのではなく、全体が見えるイメージを持つといいです」(川上さん)

時間の目安だが、川上さんの寺での瞑想は20分だそう。「大事なのは継続することなので、どうしても20分やれというわけではないですが、5分の瞑想と20分の瞑想では効果が違うとは言われています。20分のほうがセロトニンの分泌などによりさらなるリラックス効果がある。さらに30分以上の瞑想には脳のネットワークの改善が顕著に見られますが、限られた時間の中で継続するのであれば、無理をせず、通勤時間や夜寝る前の数分で充分価値があります」(同)。

今はスマートフォン向けの瞑想アプリ、瞑想ガイドCDなどが出回っている。こういったものを通勤時間に利用する人も多い。自分に合った、長く続けられる方法を見つけてほしい。

▼集中瞑想のやり方
ひとつの対象(呼吸など)に注意を向ける→しばらくするとつい別のことを考え始めるので、注意が散漫になる→再び対象を呼吸に戻すよう意識する※これを繰り返す

(鈴木 工=構成 水野浩志=撮影)
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