この商品の導入で○○円のコスト削減効果があります── 一見、どの企業にもウケそうな文句。「役所では嫌がられる可能性が高いですね」。コピー機販売のトップ営業マンとして、様々な企業、団体との商談を行ってきたAMマイスター代表 渡辺茂一郎氏は言う。相手別の攻略法を聞いた。

改革派首長率いる役所には実績より斬新さを

いわゆる「勝つ提案書」には、共通点がいくつかあります。まず重要なのは、表紙。何を提案したいのか、その結果どのような効果がもたらされるのか、一目でわかる表紙であることが第一条件です。抽象的なタイトルでは目に留まりません。具体的で、かつ相手企業が大事にしているキーワードを盛り込みましょう。

中身では、「成果」「達成」という言葉を多く使うといいでしょう。もちろん表紙に使っても構いません。私たちの提案は、あなたがたのビジネスの成果や「事業課題・目標の達成」につながるということを、具体的に伝えましょう。

では、商談相手別に考えてみましょう。まずはお役所です。役所が大事にしているのは何よりも実績。「◯◯市で導入済」「これまでに○件の実績がある」「過去にも同じような仕事をいくつも受注し、お客さまから好評を得た」といった数字や事実を、積極的に盛り込みましょう。

また、役所にはその時々で掲げているスローガンがあります。いまでいえば、「女性活用」や「ダイバーシティ」などでしょうか。スローガンを探して、資料の中にちりばめるといいでしょう。

NGなのは、「効率化することで部署の人数が少なくなります」といった言葉。役所は現状維持を求める傾向が強いので、人や予算を減らされることを嫌がります。実際はこちらの提案が実現すると、仕事の効率が上がって結果として部署の人数が減るということはありうるのですが、口にしないほうがいいでしょう。

ただし例外もあって、改革派と言われるような若い首長を戴く役所だと、民間から企画スタッフが入ってきていることがあります。この人たちは、実績よりも提案の目新しさやユニークさに着目する傾向があるので、そのときはまったく逆の対応になります。

オーナー系企業はどうでしょうか。この場合、オーナーがすべての決定権を握っているので、そこに向けたアプローチが大切です。資料にキーワードを盛り込むのはほかと同様ですが、自社製品をアピールするよりも、発言を引用するなど、オーナーが目指すことにどう貢献できるのか訴求しましょう。