日産を立て直したCEOのゴーンさんにはそうした本物のカリスマ性がありました。誤解を恐れずに言えば、10年間で信者数を数人から4万人にまで増やしたオウムの麻原死刑囚にもそれはあったのかもしれない。似非カリスマでしたが。
カリスマ的人物は、よくも悪くも人の自尊心をくすぐるのが上手です。その意味で最近、宗教が若者勧誘にフェイスブックなどSNSを利用しているのは注目に値します。SNSには相手の書き込みを称賛する「いいね!」ボタンがあります。勧誘側はいきなりメールをターゲットへ送らずに、まずは「いいね!」ボタンを押す。それを繰り返すと、ターゲットは喜び「“いいね!”をつけた人はどんな人かな?」と逆に勧誘側のページを見にくる。自然に交流が始まるのです。
こうした戦略も合法的に部下のやる気アップ術にアレンジできます。「いいね!」は相手への承認。これと同等の言葉を上司はこまめに送ればいい。さらに、自分の参謀的な人物にも同じく「いいね!」のサインを部下に送ってもらう。そうやって多くの承認メッセージを得た部下は、自分が「組織になくてはならない存在だ」と実感でき、その上司と会社に忠誠を尽くすかもしれません。
西田公昭
カルト集団のマインドコントロール研究や悪質商法の心理学研究などを行う。オウム事件では専門家証言や鑑定に携わる。著書に『だましの手口』など。