では、これまで彼らが家計に対して全く無頓着だったのかというと、決してそんなことはない。「少しは節約しないと……」と、頭の片隅に危機感を抱き続けている。ただ悲しいかな、「自分は稼いでいるのだから、このくらいの小遣いはあってもいい、たまには外食を楽しみたい」という“プチ贅沢習慣病”から、なかなか抜け出すことができないでいるのだ。

たとえば外食についてだが、さすがに1人当たり1万円以上もする高級フランス料理店や寿司屋に行くのをやめたとしても、ハンバーガーショップや回転寿司などへ家族揃って相も変わらず出かけていく。いくら高級店と比べて割安だといっても、家族全員分だと3000円や4000円はすぐになくなってしまう。それが毎週ともなれば、「塵も積もれば山となる」の先人の教えの通り、家計にズシリと重くのしかかってくる。

なかには、外食を一切やめて自炊することに決めた家族がいた。しかし、買い物はすべて高級スーパーで済ませていたのだ。確かにそのほうが、新鮮で美味しいものが手に入るだろう。でも、普通のスーパーと比べたら価格は2~3割増しが当たり前。そのうちに鍋や釜など調理器具にもこだわるようになり、「外で食べたほうが安かった」という、ブラックジョークのような話もある。

結局、彼らは節約しているつもりでも、本当の意味での節約ができていない。だから、家計は上向かない。そんな空回りする彼らの姿を見ていると、エレキギターを弾いているフリで一世を風靡した「エアギター」ならぬ「エア節約」に終始しているように思えてくる。石川啄木ではないが、「節約すれど 節約すれど 猶(わが)生活 楽にならざり ぢっと手を見る」という心境であろう。そして、夫婦の間で節約できないことに対する責任を押し付け合い、家庭不和という悲劇すら招きかねない事態に陥っていくのだ。

(構成=伊藤博之 撮影=小原孝博、飯田安国)
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