【弘兼】それから上司から好かれるために1番大切なのは、不平不満は絶対言わないということです。誰だってみんな不平不満はあるに決まっている。でも絶対に口にしちゃいけない。僕は心の中でさえ不平不満を持たないようにしていました。不平を言ってると自分の中の生産的なものが全部消えていくし、上司のやることも全部否定したくなってしまう。だから仮に上司から納得できないことを言われても、「これはいいことを教えてもらってるんだ」と思うようにしていました。

ものすごく理不尽なことを言われたとしても、「世の中には理不尽ということがあるんだな。そうかそうか、これで勉強になった」と思えばいい。もしくは「この理不尽に対処できたら、これからの理不尽にも頑張って対処していけるかもしれない」というように理不尽の乗り切り方の訓練をしてると思えばいいんです。僕はゴルフでもバンカーに入ったら、「そうか、神様がバンカーを練習しろと言ってるんだ」と解釈する(笑)。85で回るより105で回ったほうが、同じ料金でたくさん練習できるでしょう。

【俣野】確かに心の持ち方次第ですよね。サラリーマンなんて、理不尽を探そうと思ったら1日中探せます(笑)。それを探す時間があったら生産的なことをしたほうがいい。

【弘兼】メチャクチャ理不尽なことを言われたら、その状況を楽しむことですね。「A部長はこう言いました、B部長はこう言いました、さあ困ったどうする」みたいに。

【俣野】実況中継みたいに(笑)。自分の置かれている状況を外から見て面白がるんですね。

【弘兼】「これから私は上司に怒られるので、今日は思い切りへこむ日になります」という具合に誰かにメールでも打っておけばいいんです(笑)。

※この記事は書籍『プロフェッショナルサラリーマン 実践Q&A編』からの抜粋です。

俣野成敏(またの・なるとし)●1971年、福岡県北九州市生まれ。1993年、東証一部上場のシチズン時計(株)入社。安息の日もつかの間、30歳の時に半世紀ぶりの赤字転落による早期退職募集の対象になる。ダメ社員には転職や起業の選択肢もないことを痛感するとともに、退職を余儀なくされた年配者が自分の将来と重なり一念発起。2002年、経験や人脈の一切を欠く状態からアウトレット流通を社内起業。老舗企業の保守的な逆風の中、世界ブランドが集う施設で坪売上上位の実績を積み、30代で年商14億円企業に育てあげる。2004年に33歳でグループ130社の現役最年少の役員に抜擢。2011年にはメーカー本体に帰還、40歳で史上最年少の上級顧問に就任。同年出版した著書『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)は、翌年10月に出版された図解版と合わせてシリーズ累計11万部のベストセラーとなる。amazon.co.jpの2012年間ランキング(ビジネス・自己啓発)で33位に入賞。2012年6月、独立。複数の事業経営の傍ら、大学生や社会人を応援する活動をライフワークにしている。 http://www.matano.asia/
(構成=長山清子 写真=上飯坂真)
関連記事
なぜ結果を出すマネジャーは非情なのか
「いじりキャラ」vs「いじられキャラ」どちらが出世するか
出てくるやつは、どこにいても出てくる -対談 弘兼憲史×俣野成敏【1】
“上司の仕事をとる”人が出世する理由とは
40代後半:役員になる人、課長止まりの人の分岐点