介護保険制度が施行されたことをいいことに、この制度をかなり「悪用」するケースも多々あるという。ある介護ヘルパーは語る。
「かなり立派なお宅の90歳の女性のケアに入っています。ほとんど自立されていて、身の回りのことはすべてご自分でされます。息子さん家族は、2階で生活されていますが、水回りはトイレ以外、すべて共同です。本来、共有のものは掃除してはいけないことになっているのですが、居間も風呂も洗面所も廊下も掃除しなければなりません。ひたすら掃除です。ご家族は皆さん、仕事をお持ちで多忙なので『誰も掃除をしないから助かるわ』と。社会人のお孫さんなどは、たまたま居間に下りてくると、『お手伝いさん、ちょっとここのゴミを取り残しているよ』とお手伝いさん扱いです」
別の介護ヘルパーも語る。
「私は『家政婦9割引き』と言われました。そのうえ、掃除機の紙パックがパンパンになって悪臭を放ってまで使っていたので、『そんなことをしたら、モーターに負荷がかかって壊れますよ。紙パックを交換したほうがいいですよ』と言えば、『紙パックの中のゴミを外へかきだして、もう1回、その紙パックを使って』と。当然、断りました」
さらにもう一例。
「何かというと『哀れな年寄り』とご自分のことを言うかと思いきや、『あれしろ、これしろ』と命令口調。『同じところばかり、掃除しないで、たまには庭掃除や換気扇の掃除もしろ!』と怒り出す」
どの介護ヘルパーに聞いても共通しているのは、介護を受ける側は、最初のうちだけは感謝しても、2カ月、3カ月と経つうちに、介護してもらって当たり前、あたかも「家政婦がやって来た」という感覚になってしまうようだ。
介護支援では禁じられている窓ふきや庭の掃除、あるいはペットの世話なども平気で頼み、断られると、とたんに不機嫌になる高齢者も多いという。