60歳で年金受け取りは早い、資産運用も検討を

〈Public pension:公的年金〉

公的年金は65歳支給が一般的ですが、申請により60歳から75歳支給まで変更することができます。前倒しをすることで毎月0.4%減り、遅らせると0.7%増えます。私自身、今年60歳になりますが、まだ年金を受給するのは早いと思うのです。逆に遅らせることで、70歳には142%、75歳では184%増えます(70歳以降は年金受給額が増えることにより、後期高齢者医療保険の金額が増えるので要注意)。

〈Private pension:自分年金〉

恵美さんは「自分には稼ぎがないから貯金はない」とのことでしたが、ヒアリングを重ねると「親からの相続のお金が1000万円あるけど、いざという時の為に大切に預金にしている」というのです。これは勿体ないので、こちらを原資に資産運用をすることを勧めました。「離婚時に夫に増えたお金を渡したくない」というのですが、親から相続でもらったお金は財産分与の対象とはなりません。恵美さんはまだお若いので、10年でも20年でもお金に働いてもらって増やすことができますから。

ちなみに、この1000万円ですが、4%で運用したら10年後には1480万円、20年後には

2191万円、80歳になる30年後には3243万円になります。

また、こちらを原資に積立をした場合等も試算してみて比較し、心配なら月々10万円前後で8~10年くらい積立してみるのも良いと思います。その際は、信頼できる専門家に相談をして、自分が納得してから投資はしてください。まとまったお金がない人は、月々1万円でも良いからNISAを始めてみてはいかがでしょうか? いくらお金が不足するかは、専門家に相談してほしいと思います。

“元夫”から生活費をもらえるかは「わからない」

〈Working longer〉

上記の年金で問題になるのが、年金をもらうまでの間の月々の収入です。恵美さんに離婚後の働き方を聞きました。「29歳で結婚をして、夫は私が仕事をしているのを嫌がり、結婚後しばらくして退職をしました。その後長男を出産し、手が離せる頃に長女を授かったので、パートもしたことありません」とのことでした。

何をして働きたいのか、どの位稼ぎたいのか? そんな話をしましたが、「あ~考えられない。私の取りえは家事くらいなのです。料理や掃除はかなり得意ですが、そもそも夫は“お前は家事しかできないくせに”と馬鹿にします、それが悔しくて……」可哀そうに、恵美さんは自信を喪失しており、私の前でも号泣されていました。

また、恵美さんは無口な方で、自分から積極的に話すのが苦手で、ご主人からも「お前は暗い、ただ黙々と家事をする位しか取りえはないな」と言われており、パートで働くことにはどうしても踏み出せないようなのです。

「離婚後も夫からお金をもらい続けることはできないでしょうか?」そんな風に言われる方は恵美さん以外にも多いのですが、答えは「わかりません」。しかし、非常に確率は低いでしょう。なぜなら、日本では、離婚後の養育費は義務と言っても良いですが、離婚をした妻に生活費の支給を義務とする法律はありません。

離婚届とボールペン
写真=iStock.com/bee32
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