裁判員の扱いは臨時の特別公務員

裁判は法治国家にとって欠かせない仕組みだ。民主主義においては、国民の誰かがその任務を担わなければならない。これまでは、国民を代表して、専門職の裁判官が裁判を担ってきた。裁判に加わることになった裁判員も国民の代表なのだ。したがって、裁判員は、国家賠償法上、臨時の特別公務員とみなされる。

公務員は故意、重過失といった例外を除き、自ら執行した職務について、個人的に法的責任を追及されることはない。たとえ職務上の誤りがあっても、その責任は社会全体、国民全体で負うという考え方だ。特別公務員である裁判員も、誠実に職務をこなしている限り、法的責任は追及されない。現に、1審の裁判員裁判では有罪判決が下り、2審の高裁では逆転無罪となった判例も出ているが、その裁判に加わった裁判員は誰も法的責任を問われていない。

もしも裁判員が職務上の法的責任を問われるとすれば、「守秘義務違反」が考えられる。裁判員は、担当した裁判の内容を公表してはならない。それに違反すれば、刑事上、民事上の責任が発生する。ただし、プライベートで家族や親友に裁判のことを話す程度なら、悪意も実害もないわけで、現実的には問題とならない。守秘義務について、必要以上に神経過敏にならなくてもいい。

(構成=野澤正毅)
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