厚生年金の適用拡大は決定済み

「壁」の今後の動きをみておきましょう。

国民民主党が選挙の公約でかかげた「103万円の壁の引き上げ」は実施される見込みです。2024年12月16日現在まだ詳細は決まっていませんが、与党は123万円への引き上げ案を提示しています。

先述しましたが、103万円の税の壁はほとんど機能していませんので、働き方を再考するような大きな影響はありません。来年以降、所得税が減税される(手取りが増える)可能性がある、と考えておけばOKです。

より重要な改正としては、厚生年金への加入条件である「106万円の壁」が、2026年10月に撤廃されるということ。これは以前から議論されてたのもので、2027年10月には、企業規模による加入案件も撤廃される見込みとなっています。

労働時間が週20時間以上という要件は残す方向のため、労働時間による壁は残ることになりますが、厚生年金の加入対象者は大幅に増える見込みです。

年収100万円の妻と200万円の妻で生じる生涯手取りの違い

もちろん、生き方や働き方は人それぞれです。働きたくても何らかの事情で働けない人もいるでしょう。年金制度だけでなく、福祉の面からの政策も必要です。

一方で、扶養されるために就業調整をしている場合は、目先の保険料と、収入増と社会保険に加入するメリットを比較して、再考してみるのも一案です。

内閣府は、パートとして働く配偶者が年収150万円と100万円の場合で、給与・年金を合わせた世帯の可処分所得が1200万円程度異なってくるという試算を出しています。200万円の場合は2200万円の差です。

目先の保険料を支払い、配偶者手当等が打ち切られたとしても、世帯全体の収入は上がるのですね。仮に65歳時点で2200万円の可処分所得が上乗せされていたとすると、20年間で使い切った場合、88万円/年(7.3万円/月)の余裕が生まれることになります。

また、同資料によると、年収200万円は、時給1125円で1日あたり6.8時間程度の労働時間×週5日勤務で実現する金額とのこと。出産を機に離職しても、それまでにキャリアを積んでいたり、特定のスキルを身につけている人も少なくありません。このモデルよりも時給が高い人は多いのではないでしょうか。子育てのために短時間労働をする場合でも年収200万円を超えるケースは多いにあり得ますし、フルタイムで働いてさらに多くの収入を得ることができる人もいるでしょう。

平均寿命が伸び、離婚や雇用の流動性が高まりつつある時代に、性別問わず経済的に自立しておくことは、自分らしく生きる大きな助けとなることは間違いありません。特に女性は男性よりも長生きします。自身の年金を増やしておくことは、老後の大きな助けとなります。

将来受け取れる年金額については、毎年誕生月に送られる「ねんきん定期便」やウェブサイト「公的年金シミュレーター」で確認や試算ができますので、ぜひチェックしてみてください。

(執筆協力=ファイナンシャルライター・瀧健)
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