「日本語をちゃんと使えること」が前提になる

最近では、ChatGPTなどの生成系AIが実際に動くプログラムを書いてくれるようになっている。もちろん、一切の修正が不要ということはなく、プログラムを最適なものに修正するためには、生成系AIが書いたプログラムの内容を理解するためだけのプログラミング言語の知識や、例外処理等に関する経験は必須だ。

それ以前に、生成系AIを使いこなすためには、論理的な正しい文章で指示することが必要になる。

プログラミングに最も必要な、論理的思考力というのは、実は論理的な手順を正しい言語で表現することが前提にある。

つまり、日本語が正しく使えるかどうかが前提になるのだ。

日本語なんて誰でも正しく使えるに決まっているじゃないか、と思うかもしれないが、2018年に国立情報学研究所の新井紀子教授が出版した『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』では、以下の文章の違いが分からない中学生が43%もいたことが書かれている。

●幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。
●1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

そんなはずはないだろう、と思う人が多いかと思うが、これはフェイクニュースではなく、ちゃんとした学術研究としての調査の結果なのだ。

日本語の文章がきちんと理解できなければ、算数の文章題が解けないのは当たり前で、プログラムというのは、英語がベースだが論理的に正しい記述になっていなければ当然動作しないから、日本語が正しく使えない場合にプログラミングは基本的にはできない。

その意味では、本当に力を入れるべきなのは、全員にプログラミング教育を必修化することではなく、日本語を正しく使える底上げをすることだろう。

写真=iStock.com/Hakase_
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プログラミングだけが特別なわけではない

人には向き不向きがあり、スポーツが得意な子もいれば、音楽の才能がある子もいる。同じように数学が得意な子もいれば、英語が得意な子もいる。

プログラミングが得意な子というのは、そうしたたくさんある向き不向き、好き嫌いの一つに過ぎない。

大事なことは、自分自身についても、子ども達についても、向き不向きや好き嫌いを無視して、何かを強制的にやらせることや、無理してやってみることではなく、好きなこと、得意なことを見つけられる機会を提供すること、できるだけいろんなことに挑戦してみることだろう。

誰でも経験しているように、人は嫌なことはやりたくないが、得意なこと好きなことには熱中し、熱中すれば、それがますます得意になっていく。それは仕事も遊びも同じだ。

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