健康保険証の廃止は誰のための政策なのか

こうした義務を課せられているにもかかわらず、健康保険証の廃止という国民の生死にも関わる重大な決定についての公的記録を「残していない」と平然と言い放つ河野デジタル大臣とデジタル庁、厚労省の態度は、公文書管理法の第一条に示された理念をあざ笑うかのような暴挙であり、法的にも道義的にも許されないものです。

河野デジタル大臣は、2022年10月13日に健康保険証廃止を発表した際、岸田首相への報告内容と首相から受けた指示について、手元の資料を見ながら7分近くかけて説明していましたが、東京新聞の取材に対し、デジタル庁はこの「河野大臣が会見で見ていた資料」についても「首相への報告や首相からの指示を記録した文書も作成していない」として、開示を拒みました(同記事)。

写真=共同通信社
インタビューに答える当時の河野デジタル相(=2024年9月22日)
山崎雅弘『底が抜けた国 自浄能力を失った日本は再生できるのか?』(朝日新聞出版)

国民の命や健康に関わる健康保険証の廃止という重大な政策決定について、廃止に至る議論で交わされた閣僚や官僚の発言内容が、公文書管理法に基づく形で議事録や会議録に残されず、「口頭のみで議論されたから記録はない」というのは、近代国家としてあり得ない説明です。まさに底が抜けています。

この異様な状況を俯瞰的に観察すれば、よほど「国民に知られたら困るような、公益に反する発言」がそこ(議論の場)で交わされたのだなと、推測するしかありません。

健康保険証の廃止という自民党の政策は、誰のためになされているのでしょうか?

そこに「国民の命と健康を守る」という政府の責任を土台とする観点はありますか?

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