25歳男性で店員のミッチェル・クラークさんは、店舗での勤務中、店内の棚に携帯電話が立てかけられているのを目にした。クラークさんはボックスの取材に対し、「何か馬鹿げたイタズラ動画の撮影だと思いました」と振り返る。

イタズラ動画の読みは当たっていたが、ターゲットは他ならぬクラークさん自身だった。目の前で、タイトなスパッツをはいた若い女性客が突如、前屈みの姿勢に。臀部をクラークさんのほうに突き出し、衣服の裾から下着が見える体勢となった。不自然な状況にクラークさんは目を見開き、胸に手を当てて驚く様子を見せる。

そんな奇妙な出来事から数カ月が経ち、クラークさんはすっかりこの一件を忘れていたようだ。しかしある日、店舗に来た客が「どこかで見た気がするね」と言ってくる。3店舗ほど異動したから以前の店舗で会ったのでは、と応じるクラークさんに、客の口からは思わぬ言葉が飛び出した。「そうだ、(会員制アダルトサイトの)OnlyFansだ!」

動画は4ドルで販売されていた

おかしな様子の女性客が訪れたあの日、クラークさんの反応は棚に置いたスマホによって一部始終録画されていた。その後、OnlyFansで4ドルの有料コンテンツとして販売されていたという。焦りを覚えたクラークさんは、自身の動画を4ドルで購入。料金を払って内容を確かめる羽目になったという。動画では、クラークさんが驚く瞬間の表情がズームとスローモーションで強調されており、あたかも女性客の尻に見入っているかのような印象となっている。

クラークさんは自身のTikTokで、「僕をのぞき魔のように見せかけたんだ」と憤る。彼自身ゲイを公言しており、女性客に見とれたかのような演出はまったくのお門違いだという。それでも文脈を知らない多くのネットユーザーたちは、女性の下半身を凝視する店員として動画を拡散した。

ボックスは投稿者への取材を試みたものの、コメントは得られなかったとしている。偶然クラークさんの店舗を訪れた客が、以前どこかで見たと告げなければ、クラークさんは自身がコンテンツ化されていることすら知らないままだっただろう。

肩に触れられ「人種差別主義者」に仕立て上げられた女性

公共の場での動画撮影をめぐっては、意図しない映り込みも問題だ。撮られたことすら気に留めないうちに、深刻なトラブルに巻き込まれている危険性がある。米デジタルメディアのマッシャブルは、雑踏で撮影された女性の動画が40万回以上再生され、コメント欄で激しい批判の的となった事例を挙げている。

ある女性が姉妹と共に、ニューヨークのタイムズスクエアを訪れた際の出来事だ。路上パフォーマンスを行うダンスグループのメンバーが近づき、声をかけてきた。メンバーは無邪気に女性の肩に触れながら、ジェスチャーでハイタッチを求める。これに対し女性は不快感を示し、触れられた肩の部分をさすりながら涙を流した。