生成AIを使った仕事のスピードが「標準」になる

生成AIを使い始めてみて職場では最初に一部の若手社員の生産性が劇的に上がるという現象が起きるでしょう。最初は驚きをもって受け入れられるその発見も、2025年の後半には社内の仕事における新しい標準スピードだと設定されるはずです。

ところが昭和の時代と令和の時代でこの話、前提条件が違う部分が一カ所あります。人出不足で若手社員の人数が足りないのです。

昭和の時代は大企業には有り余る数の若手社員がいて、面倒な仕事は常に若手社員に下請けさせることができました。令和の時代の職場はそうではなく、より少ない人員数で仕事をこなし、若手社員と中堅社員は同じ仕事を分担します。違いは、経験の少ない若手への割り振りは少なく、経験豊富な中堅社員の仕事量は多いことです。

その前提で社内の生産性基準が1.5倍になると何が起きるでしょうか?

ある中堅社員がこれまで週50時間労働で与えられた仕事をこなしていたとします。ところが生産性についての社内の認識が変化した結果、その社員に与えられる仕事量は、以前と同じやり方なら週75時間働かなければ処理できない分量に増えるのです。

週75時間労働というのでは過労死ラインでしゃれになりませんから、30代、40代の一部の中堅社員はあたふたしながら60時間分ぐらいの仕事しかこなせずに、それでも疲れ切ってぐったりして帰宅するようになるでしょう。仕事量は社内標準の8割の量しかこなせず、職場では疲れ切った顔で仕事をする“ヨボヨボ社員”の誕生です。

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“ヨボヨボ社員”と“いきいき社員”が誕生する

一方で若手社員がAIを活用するのを見ながらそれに関心を持って使い方を教えてもらう中堅社員も出てくるでしょう。生成AIのいいところは使いどころさえわかれば使うのは簡単だということです。難しいのは業務の中でどこにどう使えるのか、使いどころを発見するところなのですが、それは若手社員が次々と見つけてくれているという前提です。

使ってみると中堅社員でもすぐに気づくでしょう。これまで自分が週50時間かけていた仕事は実は20時間程度でこなせることに。

組織の生産性が1.5倍に上がるといっても実際に起きることはこんな感じです。使える社員の生産性が2.5倍に上がり、使えない社員の生産性が1倍のままなので、組織全体としては生産性が1.5倍上がるのです。

この前提でいうと、標準労働が旧基準で75時間分に増えたとしても実はAIを使いこなせば30時間程度で処理できるのです。会社の勤務時間は残業なしで週40時間ですから、残りの10時間は新しいビジネスアイデアを考えたり、業務改善を提案したり、自己鍛錬の時間を増やしたりと建設的な業務に振り分けることができます。以前よりも毎日が楽しい“いきいき社員“の誕生です。