パソコンで「2~3日の仕事」が「数時間」で終わるように

しばらくして私自身が別の発見をしました。当時のパソコンは今とは比較にならないほど微力で、表計算もちょっとシートが大きくなっただけで計算がスタックしてしまう代物でした。大きなデータはコンサルが自分では処理できずに、クライアント企業の情報システム部に情報処理を依頼して1~2週間かけて分析結果を手にするのが常でした。

ところがオフィスの誰も行かないような奥まった場所に、古いNECのPC9801が5台置いてあったのです。

「これ動くんじゃないかな」

と思って起動させると、ロータス123という表計算ソフトが使えることがわかりました。

それで当時23歳の私はクライアントの膨大な数表のデータを分割して、自分でマクロを組んで、古くて遅いパソコンに処理させることを思いつきました。

とにかく遅いのですがひとつのプロセスに数分かけて計算結果を出し、それをファイルに格納して別のファイルに結果の数字だけを読み込むことでデータ量を減らすようにしたところ、本来パソコンでは処理できない量のデータも、夜のうちに5台のパソコンにセットして翌朝出勤すると分析結果が出力されるようになりました。

こういったことが流行して、当時、ほんとうに一時的な現象でしたが若手コンサルは仕事をさくさく処理すると、平日でも夜の六本木に遊びに行けるというとても楽しい状況がうまれました。それまで2~3日かかっていた仕事が数時間で終わるので、後はビジネス書を読んだり、通産省(当時)の友人と電話で雑談したり、夜は商社勤務のOLと合同コンサル(と勝手にネーミングした飲み会)を開催したりという日々でした。

時計とカレンダー
写真=iStock.com/STILLFX
※写真はイメージです

上司の世代が生産性向上に気づき…

2025年の大企業のオフィスではこれとまったく同じ現象が繰り返されます。1980年代ほどはコンプライアンスは緩くはないのですが、それでもつい2~3年前までは面倒で仕方なかった仕事が、何の苦もなくこなせるようになるでしょう。

さて、40年前の話には後日談があります。当時の若手社員は私を含めてそれほど賢くはなかったのです。

IT革命で若手コンサルの仕事が楽になってしばらくすると、一部の若手は分析作業が終わるとその内容を進んで上司に報告するようになりました。上司は、

「おお早いなあ。さすがだ」

といって彼を誉めるので、その報告の仕方を他の若手も真似するようになりました。

そのうち上司の世代のコンサルタントは気づくのです。パソコンで処理させると部下の生産性が、自分が若手だった時代の10倍速で処理できるようだと。若手社員よりもずっと賢い上司たちは、やがてその生産性を新しい基準に設定したうえで仕事を依頼するようになりました。