年収が低ければ厚生年金の額も低く、格差は老後も続く

厚生年金に加入していた時期がある場合は、その期間の長さや報酬額に応じて老齢厚生年金が加算される。報酬額が高ければ天引きされる年金保険料も高くなるので、その分老齢期にもらえる年金も増えるという仕組みだが、これは現役時代の所得格差が老齢期にそのまま持ち込まれるという作用も持つ。

なお、厚生年金の加入対象は2016年以降、所定内労働時間が週20時間以上で月額賃金が8万8000円以上の労働者へ段階的に拡大されており、おそらく今後は、他に主たる生計者のいない非正規雇用者の大半は厚生年金に入ることになる。これは大きな前進だが、2016年時点ですでに氷河期後期世代は40歳近くになっており、過去に加入していなかった期間は取り戻せない。

また、フリーランスの業務委託など雇用契約ではない働き方には適用されないし、厚生年金に加入していても報酬額が低ければ、年金額もその分低くなる。適用拡大自体は歓迎すべきことだが、それだけで問題が解決するわけではない。

ますます多くの高齢者が生活保護を受けるようになる

さらに、将来低年金が懸念される非正規雇用者は、未婚で子供がいないことも多い。世代全体で見ると就職氷河期世代はむしろ出生率が下げ止まりを見せていた時期ではあるが、個人レベルで見ると、初職が非正規雇用だった人は男女問わず40歳までに結婚する確率が低く、子供の数も少ない。つまり、将来低年金が懸念される人ほど、老後を子供に頼ることもできない場合が多い。

就職氷河期世代が高齢期を迎えると、現役時代の厚生年金加入期間や報酬額が十分でなかったために、年金だけでは生活が成り立たない単身高齢者世帯が増えることが予想される。現時点ですでに、生活保護受給者の半数以上が65歳以上の高齢者だが、今後はさらに増えていくだろう。